文学
再読することにした。いったん読了した上巻の最初から。「また読まなきゃ」と気になりつつ5年ぶり。とはいえ、私の場合、「また会わなきゃ」と思いつつ5年たってから会った人もいれば、10年たって会っていない人もいるので、驚いてはいけない。すぐに思った…
食事では ありふれたものばかり食べるが、読書では めずらしいものをわりと読む。最近では、中野重治「村の家」。なんでまた「村の家」を読んだのかというと―― 中野重治は私の郷里福井県の出身で田んぼの中にある生家跡を訪ねた記憶もうっすらある、というこ…
禅について、ちゃんとしたものを読んだことがないのは いかにもまずいと ずっと思っていたが、鈴木大拙『禅』(筑摩書房)という手ごろな一冊があったので、手にしている。 (ワイド版)禅を知らないといっても、日本にいれば何らか聞きかじるものであり、な…
表題作を読んだ。現在の状況の何が最も気になるのかという点でやはり強く共感。とはいえ感想はうまく言えない。それでもここにこうしてなにかつぶやくのは、それを読んだという確信、そして今日もとりあえず生きているという確信を欲した、手探りなのだろう…
再読したけど、まさに科学的空想が至上の域にまで練り上げられている感。これから何が起こるか私は全部知っているのだけれど、だからといって、抵抗はしないし、退屈もしない、それに自我が消えてしまうわけでもない、そんな境地とは?その境地。単純な例と…
100%ただつまらない間違いに、100%ただ正しい反論を述べる。そんな単純な人だったわけがないのに…(エアリプ批評)
上田岳弘「キュー」第1回をやっと読む。新潮10月号。原爆と第九条に言及。かと思えばトランプまで大げさでもなく登場。「私の恋人」に点描されていた多種の要素がやはり満を持して長いストーリーで展開していくのかという期待。浮かんでくるテーマと言うなら…
https://twitter.com/kuboon/status/903781425945731073 この作家はやはりこうした主題(知的生命体の進歩)に取り組むのだ! ◎なぜ『新潮』が新作をヤフーで掲載するのか? 編集長が語る新たな挑戦 https://www.buzzfeed.com/jp/satoruishido/shincho?utm_t…
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と『優雅で感傷的な日本野球』、吉本隆明による当時の書評がネットに出ているので、読んでみた。小説自体を読み直しているかのごとく はまりこむ。◎https://allreviews.jp/review/490◎https://allreviews.jp/…
さっきひと眠りしたら、社会の劣化と深刻な恐怖におののく夢をみた。眠る前に大江健三郎の「飼育」を読み終えたせいだと思われる。江藤淳によるその短い解説も読んだせいだと思われる。こんな特異で強烈な反応をもたらすような小説に、近ごろあまり触れてい…
映画『メッセージ』は未見だが、原作「あなたの人生の物語」を昨日読んだ。ある地球外知性とのコンタクトが描かれ、それを通して浮かび上がってくるのは、なんと言語表記のはてしない可能性、かつまた物理表記のはてしない多様性だった!(私がときどき夢想…
《たそがれには うつむきかげんの 少女が よく似合う 悲しそうな 目をして たたずんでいる 一人ぼっちで 僕はといえば 古びた ギターケースに 腰掛け くわえたタバコに 火をつけて ため息ひとつ こぼした》 唐突だが、これは70年代、私がまだ10代だったころ…
仕事関係や森友関係でずっと忙しく、『騎士団長殺し』をやっと再開。村上春樹は、価値が高いものと思って長年慣れ親しんできたわけだが、ひょっとしてそもそも最初から無価値だった、ということが判明したら、どうするのだろうか、私の人生。これは、左派の…
読み始めた。これを買う70万とかいう読者のなかで、私は何番目くらいにこの本が「わかる」のか、それははななだ不明だが、それでもこの本が「好き」かどうかとなると、けっこう自信がある。各章のタイトルを目にしただけで、その世界にはまりこむ感あり。そ…
「日本でも早く安楽死法案通してもらいたい」 * それはそれとして――格納容器、最大530シーベルトの線量推定 福島2号機(朝日新聞2月2日)圧力容器の真下に位置する格納容器の底、などという場所のことは、すっかり忘れていた。というか、どうしても忘れ…
読んでいてずっと、おもしろくなりそうなんだけど、どこかパンチが効いてこないままだった、というか。前に「消滅世界」も少し読んだのだのと合わせていうと、ヘテロではないがLでもGでもBでもTでもなく、いわば無というか草食のきわみというか、この作家は…
加藤典洋『敗戦後論』を読み返している。突出して意義の深い考察がなされている。私が読んできた本のなかでは明らかに群を抜いている。驚くしかない。というか、それほど意義の深い考察ならば、20年たったからといって中身をこれほど忘れていたのはどうなん…
ノーベル文学賞のパラドクスはこうであった。すなわち規則は行為の仕方を決定できない。なぜなら、いかなる行為の仕方もその規則と一致させられ得るから。ボブ・ディランがふいに選ばれてしまうのがノーベル文学賞であり、村上春樹が選ばれるんじゃないかと…
「どんな言葉並べても 真実にはならないから」(花束を君に・宇多田ヒカル) このことに強く思い当たったことがある人や、実際に言ったり書いたりしたことがある人は多いだろう。 言葉は本当のことを表さない・本当のことを伝えない身にしみてそう思ったとき…
http://www.jinsei-bungaku.jp/ http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/akutagawa/
島田雅彦さんは近ごろ思想や行動が過激だと思う。小説に増してであることが文学ファンとしては大変残念。 https://twitter.com/ynytk/status/751734387553603584というわけで、そうだ、平成の文学ファンとしては、改憲をめぐる言論の破壊と創造を見物でき、…
清原やベッキーをめぐる出来事がもしも小説や映画なら、彼らを100%好意的な人物として描くことは可能だろうし、それならば見聞きする人々もわりと自然にエールを送るだろう。でもこの出来事が「現実だ」と思っているせいで、なかなかそうもできない人が多い…
芥川賞の滝口悠生「死んでいない者」を文學界12月号で読んだ。お通夜に集まった親族たちの、ありふれた行動を淡々と追っていくなかで、それぞれの人物像と状況、親子や兄弟としての微妙な関わりあいが、平凡ながらも切実な現実味を伴って、みごとに織り上げ…
正月気分でつい。すでにUターンラッシュはピークを迎えたというのに…。しかしこの小説、面白い!1860年代が舞台であり、農奴解放がついに実施され、西からは社会主義思想も入り込み、とにかく激変・動揺の帝政ロシアだったようで、何だか分からぬその新しい…
雑誌『ワイアード』が「ことばの未来」という特集をしていて、これが非常に面白い。ワイアードはいつも他のメディアにない先端的な視点が、本屋で立ち止まらせる。少し前には「死の未来」という特集もあった。 特集の最初は、言語の翻訳を統計処理によって行…
このあいだアガサ・クリスティの話になって、『予告殺人』がベストですよと言われたので、読んでみたら、期待を超えて面白かった。その流れで『そして誰もいなくなった』も未読だったので読んでみたが、腑に落ちる感は『予告殺人』のほうが はるかに勝る。そ…
キリスト教を乗り超えるかたちで西洋近代の思想と生活が出現したが、今や、その西洋近代の行き詰まりを一掃するためにこそイスラムの思想と生活が必要だ、といった必然性が語られている。言い換えれば、キリスト教は中途半端な信仰だったから人間中心主義や…
ふしぎに面白く、ふしぎに一気読みしてしまった。突然の気づきと驚きのなかで、人の認識は、人の人生は、あっと相転移する。この小説ではそれが時をおいて繰り返される。それを悟りと呼びたくなるのは、この作家の過去の作品とまったく同じ。そのときの情景…
阿佐ヶ谷北の中杉通りと早稲田通りの交差点。青木淳悟『匿名芸術家』で やけに詳しく描かれるが何の変哲もない場所の1つ。路線バスのルートだそうだが、今Google Mapを見たら、ちょうどホントにその関東バスが左折していて、驚愕した! 全体にきわめてとぼ…
ド・ミ・ソのミが半音低いだけで、なぜ暗く悲しく響くのか、ということが15年ほど前からずっと気になっていた。これは相当幅の広い問いのようで、音楽の領域にとどまらず人間の心理や世界の文化史なども関係してくるだろう。そうなると、その問いをより良く…