東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★あなたの人生の物語/テッド・チャン(再読)

 

 あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)


再読したけど、まさに科学的空想が至上の域にまで練り上げられている感。

これから何が起こるか私は全部知っているのだけれど、だからといって、抵抗はしないし、退屈もしない、それに自我が消えてしまうわけでもない、そんな境地とは?

その境地。単純な例としては、このままでは確実に王が取られるのが見えたけど投了まで対戦している、みたいな? この世に事象は無数にあれど、あらゆる事象のあらゆる展開を把握できている知性がもしあれば、彼にはもはや未知の未来はないことになる。将棋では現実にそこに至りそう。

将棋よりは(たぶん)大いに複雑な人生はどうだろう。

1つ私が思い当たった境地―― 中国のシルクロードを10年ぶりに再観光し、敦煌では同じく感動するが同じくガメつい料金体制に同じく怒るだろう、トルファンでは同じく感動するがツアーの最後は同じく疲れて名所を1つか2つ端折るだろう。つまり、そんな先行きをすでに知っているにもかかわらず、それでもなぜか、知っていたとおりに自分はふるまうことになり、知っていたとおりに出来事は進んでいくことになる。そんな境地。

もう1つ思いつく例。自分が将来ガンと告げられたら…。それから起こる出来事というのは、実はすでにいくらか予測も体験も(近親者などの体験として)できているように思われる。そして、知っていたようなストーリーが本当に展開し、知っていたような自分や周囲のふるまいを体験するだろう。

補足:ガンは未体験ですが、シルクロードの再観光は実体験として言っています。


◎過去の感想など
http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20170618/p1
http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20171101/p1