東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★匿名芸術家/青木淳悟

 匿名芸術家


阿佐ヶ谷北の中杉通りと早稲田通りの交差点。青木淳悟『匿名芸術家』で やけに詳しく描かれるが何の変哲もない場所の1つ。路線バスのルートだそうだが、今Google Mapを見たら、ちょうどホントにその関東バスが左折していて、驚愕した!

全体にきわめてとぼけた味わいが心地よいのだが、それでいったい作者はこれで何をしているのかと問うてみても、うまく答えに行き着かない。しかしながら、それをいちいちGoogle Mapsで確認している読者もまた、いったい何をしているのだ!

いずれにしても、デビュー作の『四十日と四十夜のメルヘン』を何年も前に読んだときの感触がよみがえる。小説の筋書きははっきり覚えていないけれど、その独特の感触だけが、これは同じだと確信させる。その間にこんな感触の文章に他にはまず出会わなかったのだ、ということも知る。

……と思いきや、なぜかこの本には、『四十日と四十夜のメルヘン』が合わせて収載されているのだった… ああっ、しかも作者が「田中南」ではないか!(その意味は『匿名芸術家』を読んでいる人にしかわからない)