『読む哲学事典』(田島 正樹):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
ぎっしり積まれた冷凍食品から1つ取り出すのが通常の哲学事典だとすれば、これはまるでホテルの朝食バイキングに並んだ新鮮で温かいアラカルトを気の向くまま食べる感じ。素材2つの組み合わせ「愛と暴力」「言葉と意味」「知識と信念」「卵とトマト」…
「なるほど!」「わかった!」と本当に言いたくなる瞬間がそのつど訪れる。「おいしい!」に似ているかもしれない。哲学は面白いものだと改めて思う。
幅広い品ぞろえの中、やっぱり分析哲学系の品に手が伸びる。
雪男を探索するという課題(プロジェクト)、あるいはUFOを探ろうという課題が厳密に言って何を意味しているのかは、それらが発見されたときはじめて明らかになるのではないか? 一般に、問題の意味と本質は、それが解かれてはじめて明らかになるのではないか?》(「言葉と意味」)…なるほど!
著者の名は、野矢茂樹『無言論の教室』の妙に癖のある先生のモデルとして知られていた、というか知られていなかったというか、とにかく気になる名前だったが、著書を読むのは初めて。…と思いきや、ブログを長く書かれていて、これまで何度も目にしてきたことに今さら気づいた。
しかもブロクは現在でも頻回に更新中ではないか!
blog.livedoor.jp/easter1916/
ところでララビアータって何だ?(アラビアータなら食べてもいいが)
哲学者の饒舌ほど素晴らしいものはない。文章の組み立ても用語の選び方も最高度に的確に感じられるからだ。哲学者こそ文章の玄人だろう。そして思考とはとりわけ思考の伝達とは、ただただ言葉による営み、言葉に頼り切る技芸なのだろう。
だから哲学の感動は やはり「おいしい」ではなく「なるほど」「わかった」であるはずだ。料理は「おいしい」がふさわしく「なるほど」では幸せかどうか不明。さてそうしたときに、音楽なんかは「おいしい」もあるが同時に「なるほど」「わかった」もある。音楽も思考か? それは理論の話か?
(3月14日)
かねてより評価が高かったことを知る。
名著でありながら長らく品切であった田島正樹『読む哲学事典』が講談社学術文庫に入ったので、来期の演習のテキストにしました。もとは新書として出た本ですが、世間の新書のイメージよりもレベルが高すぎて増刷されなかったのかもしれません。(私の思う新書とは、このレベルの本を含むものですが。) https://t.co/F6za1qWL77
— 青山拓央 / Takuo Aoyama (@aoymtko) 2024年3月13日
『読む哲学事典』(田島正樹)、最初の項目は「愛と暴力」だ。愛と暴力? それはまったく違うもので比較すらナンセンスだろうと思いきや、なんと愛と暴力を「贈与」がつないでいるという。なるほど! たしかに愛も暴力も贈与かもしれない。迷惑な負債を否応なくもたらすというか…