東京永久観光

【2019 輪廻転生】

批評

人はある日とつぜん人柄をあらわす

★人はある日とつぜん小説家になる/古谷利裕 同書が最初に言及する磯崎憲一郎氏(芥川賞作家)と著者古谷氏が対談するというので出かけていった。新宿のジュンク堂。2月20日。あたかも「デキる上司がダメなバイトを叱る図」のようで、実際はまったくそうでは…

小林秀雄 食べ放題(590円)

きのう昼飯のお供に、小林秀雄『考えるヒント』の文庫を買った(asin:4167107120)。「言葉」と題するエッセーに、「姿ハ似セガタク、意ハ似セ易シ」という本居宣長の引用がある。《ここで姿というのは、言葉の姿の事で、言葉は真似し難いが、意味は真似し易…

アーキテクチャと思考の場所

公開シンポジウム「アーキテクチャと思考の場所」を聴きに行った。http://www.cswc.jp/lecture/lecture.php?id=60こちらのブログでおおよそが分かる。→http://d.hatena.ne.jp/tarenagashi/20090128#p1 ●浅田彰にがっかり東浩紀が提示する「アーキテクチャ」…

『ゼロ年代の想像力』(宇野常寛)

たとえば、本棚の『動物化するポストモダン』は線を引きすぎてもうボロボロだとか、埃をかぶった『終わりなき日常を生きろ』と『新ゴーマニズム宣言スペシャル 脱正義論』がまだ捨てられないとか(その下では『構造と力』がムシ喰い状態)、押し入れの『新世…

親譲りのピテカンで小供の時からカッコいい

宮沢章夫『東京大学「80年代地下文化論」講義 』(asin:486191163X)80年代とは何だったのか。この問いがもし陳腐であり意味薄であるならば、「江戸時代とは」「応仁の乱とは」等々いかなる歴史語りもナンセンスになってしまう。だからもちろん80年代史とい…

なぜ面白いのか 腑に落ちた

東浩紀:「メタデータ」が主役のコンテンツ消費・人文系が語るネット(下) http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbe000008112007 決定的に重要な指摘の詰め合わせだ。 そうするとこれは歴史的ともいうべき文書だったことになるか。 ニコニコ…

誰も私にギャフンとは言わせない、知的にも、恋的にも

金井美恵子『文章教室』(asin:4309405754 asin:4828821406)じつにまあ意地の悪い小説だ(高橋源一郎でなくてもまず出てくる感想はそれだろう)。ただ、読んでいる一般の立場としては、登場人物にされて揶揄されることも、あるいは自分の書いた文章に矛先が…

写ってしまう眺められてしまう恐ろしさ

多木浩二『肖像写真—時代のまなざし』(岩波新書 asin:4004310865)をパラパラと。リチャード・パワーズの小説『舞踏会へ向かう三人の農夫』(asin:4622045176)は、同名の実在写真がモチーフとなって展開していく。その写真家アウグスト・ザンダーのことが…

東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』asin:4061498835

明瞭な問題設定と順路でぐいぐい進む論考だ。分析の道具となるキーワードが次々に出てくるが、すっきり定義され体系づけられている。分かりやすく、気持ちよい。そうして行き着いたのが「ゲーム的リアリズム」。決定打。ゲーム的リアリズムとは「現実と虚構…

小説の人間原理 〜 佐藤友哉「1000の小説とバックベアード」

高橋源一郎のインタビュー(文藝06年夏号 聞き手=柴田元幸)に関して、もう少し。インタビューの最後のほうで、高橋源一郎は、「近代文学あるいは小説が終った後には何が来るのか」という問いを発端にして、小説というジャンル自体への無条件の信頼を改めて…

高橋源一郎のボケとツッコミ

高橋源一郎の小説。あれはつまりボケだ。正しいツッコミが誰にも思いつけない困ったボケ。それを目指してボケを徹底して磨き抜いたのかもしれない。ただ最近は、ボケをむしろ緩く鈍くすることでツッコミをよろよろと回避する大リーグボール3号のごとき戦略…

村上春樹いろいろ

先日ちょっと眠れなくて、『1973年のピンボール』(ASIN:4061831003)を枕元に持ち込んだ。そうしたら飛ばし飛ばしだが最後まで行ってしまった。いやはや。驚いたことがもう一つ。これがきわめてしっくり面白い小説だったこと。これまで以上に明白に実感。そ…

見きわめるべき困難が見えているか

『波状言論S改』を読んだ。東浩紀が企画し、宮台真司・北田暁大・大澤真幸それぞれをゲストに招き、最近の関心事や発言の真意に、鈴木謙介とともに迫る。そんな3鼎談をまとめたもの。ゲストの選択について、東は「社会学が大衆化し社会の道具として使われる…

人生いろいろ、煙草もいろいろ

ニコチン中毒を是とする人に煙草をやめろというのは、阪神ファンに道頓堀に飛び込むなというようなものか。そこには、命がいくら縮もうと「これをためらったら生きる甲斐がない」という岸和田のだんじりにも似た美学があるのだろうから。しかし、「禁煙ファ…

島国ブログ

北田暁大と東浩紀のトークショーを見に行った(参照)。『ユリイカ』もぱらぱら目を通した。インターネットやブログは広範な現象だが、やはり「はてな」は話題の中心にくる。インターネットは広がりも繋がりもリゾーム化してまったりして動物化してロマン主…

酔狂としての感動

北田暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』(NHKブックス) ASIN:4140910240同名の論文を『世界』で読んだ一人として、こうした著書を楽しみに待っていた。実際あの分析が詳しく積み上げられる。2ちゃんねるの本性として抽出された「ロマン主義的シニシズム…

病気はお前だ

本橋哲也『ポストコロニアリズム』(岩波新書) ASIN:400430928X サイードの『オリエンタリズム』と、スピヴァクの『サバルタンは語ることができるか』、それぞれのエッセンスが一応明瞭に理解できた気がする。やはりこんな簡単なからくりの分析だったのだと…

滑空する評論

仲俣暁生『極西文学論』 ASIN:4794966458 《私たちは今、どこにいるのか?》――基本的な問いを携えつつも、この評論は、サイモン&ガーファンクルの「アメリカ」を飛び立ったあと、ペリー・真珠湾・ベトナムなどなど年表と地図を大胆にワープしながら、サリン…

ベストアルバム、超絶リミックス

このところ 坂本龍一の『UF』(映画音楽集)を聴いていた。素晴しい。本人が強く関わったベストアルバム(3作中の1つ)。傑作ばかりの20曲だが、とりわけ「シェルタリング・スカイ」「ハイ・ヒール」「嵐が丘」「ブッダ」といったオーケストラを全面に…

世界を正しくやりくりするために

岩井克人がグローバル経済について面白い視点を示している。『インターコミュニケーション』50号、島田雅彦との対談。先日まとめた柄谷行人の視点(新潮8月号 福田和也との対談)も面白かったが、さらに3倍は面白い。グローバル資本主義というものを、多…

「現代批評の核」2

柄谷行人と福田和也の対談「現代批評の核」(新潮8月号)の中身を2日付けでまとめた。今度は、それを読んで巡らせた自分の思いを書いてみる――。 対談では現在の「テクノロジーの高度化」がまず問われている。ただ具体的に挙がるのは結局ケータイやメールで…

「現代批評の核」

柄谷行人と福田和也の対談『現代批評の核』(新潮8月号)。結論は「近代文学は終った」ということで、それだけ取れば「またかい」となるのだが、じっくり読み直してみると、その根拠に当たるところの「現在に特有な状況とその困難」がどういうものであるの…

小説いろいろ

近代文学はもう終わったんですよ皆さんしつこく言わせないでくださいよもう、と柄谷行人がしつこく言っている(新潮、福田和也との対談)。ぱらぱら読んだだけで記憶もテキトウだからそのつもりでいてほしいが、19世紀のフランスやドイツの大小説を引きあ…

宇宙も思考も晴れ上がりそうで、なかなか

池田清彦に言わせれば、ビッグバンなどという超自然の神秘現象を信じるのだってまあオカルトみたいなもんだ、ということになるらしい。「言えてるかも」と思いつつ、佐藤勝彦『宇宙96%の謎――最新宇宙学が描く宇宙の真の姿』(asin:4408322032)という本を…

タイミング

●資本制や国家への対抗運動として柄谷行人氏が提唱した「NAM」(解散)。それと関わりの深かった地域通貨プロジェクト「Q」。これらのメンバー間で熾烈な内紛劇があったとの噂は聞こえていたが、その核心とおぼしき経緯の詳細がQプロジェクトのサイトに…

理解中枢の薬物刺激

●活字中毒。なにか読んでいる状態が平常で、そうでないと煙草や酒を欠くのに似てじっとして居られず手も震えだす。…のかもしれないが、結局そうなる前にそこらの本でどこかのページをめくってしまうので、どうにかなっている。では、煙草ならニコチンやター…

タグによる分類

●上記タグで分類進行中 ●これより過去のエントリーはこちらから → https://junky.hatenadiary.org/ ●さらに過去のエントリーはこちら → http://www.mayq.net/mokuji.html