スティーブン・ピンカーは、宝くじなんて絶対買わないようだ。前立腺がんのPSA検査もわたしは受けないと言う。コストがベネフィットを大きく上回るから、ということだと思われる。『人はどこまで合理的か』より。
https://www.soshisha.com/book_wadai/books/2589.htm
一方でこんなことも言う。
《どれほど多くの孤独の独身者が、話の合わない相手と退屈なコーヒーを飲むはめになるという高い確率だけを考えて、良きパートナーとの幸せな生涯という確率は低いが貴重なチャンスを見送っていることだろう》ーー婚活はコストに見合った便益が十分あるよ!ということか。
同書は、私たちが陥りがちな錯覚のカラクリを、ことごとく鮮やかに示す。ただし腑に落ちるまでのプロセスは、いずれも実質的に込み入っており、さらには修飾的にも入り組んでいる。なので、「なるほど!」とようやく実感に達したときの感嘆は、とても大きい。
たとえば―― ある薬の臨床試験で5%未満の値で有意差が出たとしよう。これが意味するのは「この薬に効果がなければ、このような試験結果が出るのは5%(20回に1回)に満たない」であり、「このような試験結果が出たら、この薬に効果がない確率は5%に満たない」ではない。――というのだ!
そんな驚嘆の連続なのだった。……しかしまあ「人はどこまで合理的か」はさておき、「人はどこまでこんな本が嫌いか」も、いくらか重く受け止めなければならないだろう。そんな余計な心配もしてしまう。
しかし、こんな本がどこまでも好きだという珍しい人のために、もう1つだけ引用しよう。先ほどの「5%未満の有意差」に絡んだジョーク。
《ジェリービーンズを食べるとニキビができるというので、科学者がその相関関係を調べるのだが、色別に調べていったら、20色のうち緑のジェリービーンズだけがp<0.05(※つまり5%未満で有意)となり、これを発表して有名になるというジョーク…》(下巻 p.88)
これ、私は5分ぐらい首をひねって、ようやくジョークの意味がわかった。5分のコストを厭わないほうがよい。面白さのベネフィットはあまりあるものなので。
→(続き)https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2023/07/06/000000
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閑話休題。ギガ数だけでなく閲覧件数も気にする本日。