東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★数学する精神/加藤文元(中公新書)

https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2022/09/25/000000

先日の対談視聴(↑)を機に、加藤文元さんの『数学する精神』(中公新書)を読んでいる。

数学する精神 増補版 -加藤文元 著|新書|中央公論新社

 

まだ途中だが期待を超えて刺激的。私はずっと<数学は人間にとって世界においていかなる位置にあるのか>が気になって仕方ない。<数学は何をしているのか>でもいい。それにズバリ答える一冊だと言いたい。

<数学が何をしているのか>を説明していって「内的な整合性」「モデル」といった用語に至る。みな平易な言葉だが、究極どうしてもこの言い方になるんだろうなと思う。しかもそれとは別の位置づけである「数学の美しさ」についてなんと数学者が限りなくクリアに言及する! 逡巡と果敢の間奏曲。

 

(10月29日)

読了している。

著者は、この書で数学の具体的内容をいくつか紹介しようと書き始めたものの、そもそも数学の対象や考え方とは何か、つまるところ数学とは何かが気になりだし、その根本から書き改めることになった、といったことを述懐している。

その根本は「数学の美しさ」そして「数学の正しさ」という2つの言葉に収束していく(まるで関数のグラフのごとく?)。それは読者のアテンションをつなぎとめるためではなく、著者の渾身の自問として探索されていると思える。だからこそ私たちの数学への多少は本格的な興味を確実に巻き込む!

その自問は「人間の数学と宇宙人の数学は一致する?」という最大級に面白い空想にも通じる。著者は数学とは特定の身体や認知をもつ人間という知性が「するもの」だという実感が強く、そのため空間の把握などは宇宙人とは異なるだろうと述べる。――これは千葉雅也氏との対談でも言っていた。

もう1つ目を開かれたこと―― ある定理や証明と別のある定理や証明が「あれ、これって同じパターンだ」とふいに気づく。このメタ認知こそ数学の核心だと著者は言う。類似類推アナロジー。私も薄々常々ものごとがわかるとは<これとこれはこう似ている>がわかることだと感じており、自信を得た。

「数学の美しさ」と「数学の正しさ」も著者はいくつも言い換えながら探り当てようとする。この自在のそしておそらく率直な類推。そして「数学の美しさ」と「数学の正しさ」は、それぞれ独自のありありとした姿として読者にも照らし出される。そこを読むのが私には最も心地よかった。

 

 *

 

◎関連のエントリー

いつか死ぬという公理系、いつまでも死なないという公理系 - 東京永久観光