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【2019 輪廻転生】

★実践! クリティカル・シンキング/丹治信春

論理学の本は、食パンを生でバターもつけず食べるようなものと思っていたが、カツオと昆布で出汁をとって味噌汁を作るようなものかと思い直した。ともあれ、愛好者の少なさと、裏腹の強さが、いつも思い浮かぶ。

 

筑摩書房 実践! クリティカル・シンキング / 丹治 信春 著

 

今回新鮮だったのは、「だから」で連結される推論には、認識根拠と存在根拠の2種があると知ったこと。たとえば<風が強くなってきた。だから台風が近づいてきたのだ>と<台風が近づいてきた。だから風が強くなってきたのだ>。この出汁の違いを私たちは感じ取れる!

 

もう1つ印象深いエピソードーー 高校時代に先生から「君たちは人類の進歩を信じるか?」と問われ、著者を含め2,3人だけが「信じない」と答えた。その意味は「人類が進歩するとは信じない」であり「人類が進歩しないと信じる」ではなかったのに、先生は誤解していたのではと後になって気づいた。

 

著者の丹治信春さんについては、昔クワインとかに少し興味をもったときに専門的な著書を読んだような、読まなかったような、読まなかったような…… この新書は60歳を過ぎてから学部の1年生に教えた初の講義が元らしい。思いがけず発見が多かったと言う。論理には未開拓部分がまだまだ多いのか。