リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』を読み始めた。2段組800ページ余のたった20ページほどしか進んでいないが、もう私の一生で小説を読むのはこれが最後でいいんじゃないかと、そんなことを言いたくなっている。
たとえばフランスとオーストラリアに行ったあとインドに行くと「うわーなんだこの国は」とみんな驚くだろう。しかしやっぱりすることは旅行だろう。ところがパワーズの小説は「あれ今何をしているんだっけ?」という境地に陥らざるをえない。小説を読むつもりで来たけど、何か違うことをしている!
(6月20日)
綴じられた1冊の書物に、どれほど広く深く多くの事象が刻まれているのかと唖然とする。パワーズの小説はいつもそうだが、今回の『黄金虫変奏曲』は、なにしろ遺伝暗号の謎が物語を彩っており、特にそう思わざるをえない。小説を読むとは、作者が配列した言葉の暗号をほどいて発現させること。
昔(2001年)もそんなことを考えた → http://www.mayq.net/dna2.html
しかし、リチャード・パワーズが『黄金虫変奏曲(The Gold Bug Variations)』を発表したのは1991年。
(7月9日)
Essential細胞生物学と黄金虫変奏曲 - 東京永久観光
(7月29日)
『黄金虫変奏曲』には、長い長い讃歌がつづられている。あるいは、無数の詩句がちりばめられている。「ああ恋人よ」と吟じる代わりに「ああ核酸よ」、「おお神よ」と詠う代わりに「おおアミノ酸よ」と。
→ https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2022/09/10/000000 に続く