『本格小説』(水村美苗)を再読することにしたら、もう止まらない。何が面白いのか考えて、つまるところ写実が徹底されているからだと思った(もちろん虚構なのだが)。写実の日本・写実の歴史というものの上に、人々の本当にこうだっただろうという生涯が幾重にも展開していく。そして完璧な叙述。完璧な叙述。
(12月26日 追記)
今年は長い小説を読まなかったなと残念に思っていたところに、押し詰まってから、あっという間にこれを(水村美苗『本格小説』)を読み終えてしまった。
長い年月が本当に経過したような気になるのが良い小説の証、というのはやっぱり正しいと思う。それと、えーっと今までいったい誰の長い話を誰が聞いていたんだっけ? という変な気持ちになる。
小説に出てきた人物たちは、本当にこの人生を生きたわけではない。でもまるで本当にそうしたかのように今は感じる。そもそも生きることがどんなことかを誰もうまく言い表せない。そのとき、本当に人が生きたと思わせる小説を読むことは、本当に生きることとほぼ同じだという確信がむしろつのる。