東京永久観光

【2019 輪廻転生】

発現する業務と遺伝子

それにしても今回、組織的なプロジェクトに加わって思ったのは、多数のスタッフが与えられた各々の業務を淡々とこなすのは、遺伝子の発現さながらだ ということ。

細胞が滞りなく再生産されたり臓器が計画通り出来てきたりするのは、人体もプロジェクトも同じなのかもしれない。複雑すぎてどうやってゴールまで行くのか検討もつかない臓器であってもプロジェクトであっても、徹底した指揮系統と徹底した忠実遂行があれば、達成できるのだ。

そこには質問と応答の細かいプロトコルも手順もすべて定められている。会議とかメールとか。ゲノムの場合もDNDのどこかにそれが記されているはず。それをみんなが守って協調しないとプロジェクトも人体も達成できない。

そしてもう1つ知ったのは、私は今回本当によく仕事をしたけれど、多くの人は常に本当によく仕事をしているということだった。人体という奇跡も仕事という奇跡も なんだか平ちゃら。まさにアメイジングでインクレジブルでアンビリーバボー。

要するに「人体もすごいが会社もすごい」ということ。ゲノムやスタッフにバグがあったら困るということでもある。スタッフには、がん遺伝子も紛れ込むこともあるが、そのときは誰かが がん抑制遺伝子の役目をする。君はどっちだ?

 

こういう話のついでに書いておくと―― 私たちの親はみな、子どもをもうけたという点では、生物進化の適者ととらえることができる。ただし、私たち子どもがみな、生物進化の適者だとはかぎらない。このことを私たちは忘れている。

私たちは自分のゲノムにはなんらかの微妙な変異(バグ)のセットを抱えている。そのバグはほかの誰とも一致していない。そのバグが生物進化や会社進化にとって良いバグか悪いバグかで、私の人生の彩りは変わる。体や頭や心の定型度も変わる。それはどうしようもない。