★植原亮『科学的思考入門』(講談社現代新書)

物理学の講義とかちょいちょい聞いているから、近ごろは「科学って何だろう」という問いが頭の真ん中を占めている。植原亮『科学的思考入門』(講談社現代新書)はそんな思いに寄り添うような本だった。

科学的説明とは何かを解説するなかで「モデル」というナイスな方法論がまず示される。ポイントは視覚の像に必ずしも似ていないことで、その究極に「数理」がある。ただし、数式の厳密さとは実は「意味を抜く」なので、達人となれば逆に日本語での説明のほうが まどろっこしくなるそうだ。

……たしかにその乖離には、物理本の随所でぶちあたる(無謀運転のせいで即死)

ともあれ、こうして科学は「統合」へと向かう。「世界の全体は巨大な1枚の絵に描けるはず」という固い信が見えてくる。ふとボルヘス「バベル」が思い浮かんだ。だが本当にそれは達成されるのか? 「絵の中に空白は絶対に残らないのか」という問いが示されて、同書の解説は終わる。

ほかにも「素朴物理学」「素朴心理学」の話などが面白かった。たとえばアニミズムや生気論、そして心理的本質主義へ。人間には人間たる本質がある、「〇〇人には〇〇人たる本質がある」といった確信がかかえる落とし穴。それは進化論の冷静な理解も妨げてしまう。