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【2019 輪廻転生】

ダーウィンとジュリアン・ソレル

ダーウィンは1809年生まれ。『赤と黒』の主人公ジュリアン・ソレルと同い年かもしれないと知る。ただし、ジュリアンは庶民の家に生まれナポレオンにあこがれて立身出世を夢見たのに対し、ダーウィンはとても裕福な家に生まれ、研究者になりたいと考えた。ぜんぜん違うとも言えるが…

 

レナール夫人と恋仲になったジュリアンが醜聞を避け神学校に逃げ込んだころ、ダーウィンもまた神学を学んで牧師になろうとしていた。当時は牧師が余暇に研究するのが科学者になる常道だったそうだ。しかしダーウィンは縁あってビーグル号に乗り込み、5年間 世界の地質や化石や動植物を見て回る。

ビーグル号の出航は1831年。知られているとおり、ガラパゴス諸島でフィンチのくちばしが生息地によって多様なのを見たダーウィンは、「この鳥たちは天地創造のときに神が作ってそのままだったわけではないんじゃないか?」と重要な疑いを抱く。

当時は、地球は作られて数千年しかたっていないと聖書の記述どおりに信じられていたらしい。それにしては地球の地層はダイナミックに変化しているし、見たこともない動物の化石がいろいろ見つかっているし、どうなってんだと、近代最前線の欧州知識人たちは首を傾げていたようだ。

そんな時代に唱えられた進化論。当時の常識からすればトンデモ科学、陰謀論みたいなものだったのかも。現在でいうと、どんな突飛な説を思い浮かべればいいだろう。いやそもそも「なんでそれに今までみんな気づかなかったかねえ」という巨大かつベーシックな発見というのは、まだありうるのか?

というわけで、ダーウィンを主人公にした知的冒険青春小説『白と黒』があったら、読みたい。

 

代わりに読んでいるのは『進化 生命のたどる道』(カール・ジンマー著 長谷川眞理子 日本語版監修 岩波書店 2012年) 図版が多くて胸が躍る一冊。

ところで、ダーウィンが軍艦ビーグル号に乗り込んだのは、艦長が長い航海の話し相手としてだれかを探していたから、という話もけっこう知られている。同書では次のように書かれている。

《艦長のロバート・フィッツロイは、長い航海で気が滅入り、自分が自殺してしまうのではないかと心配していた。なぜなら、同じく船長を務めていた伯父が、そういう運命をたどったからである。そこでフィッツロイは、非公式な博物学者として航海に同行し、彼の話し相手となることで鬱病から救ってくれるような紳士を探しはじめた。最終的に彼が選んだのが、22歳のダーウィンだった》

 

ジュリアンがレナール夫人の心を癒やしたのに対し、ダーウィンはフィッツロイ艦長の心を癒やしたと言えるかもしれない。では若者よ、君ならどちらの役を買って出る? ただし、フィッツロイの条件は「勉強できる人」だったし、レナール夫人の条件は「イケメンに限る」だったかもしれないが。