東京永久観光

【2019 輪廻転生】

叶姉妹 VS 加納姉妹


雑誌『考える人』の村上春樹インタビューを読んだら、無性に村上春樹が読みたくなり、本棚にたまたまあった『ねじまき鳥クロニクル』を読みだした。面白い。 asin:B003T0LLEW 

このインタビューを読んだことで、村上春樹は読んで面白ければ「それでいい」という以上に、まさに「それこそがいいのだ」という読者としての自信が持てた。

それは半ばバカにされるほど単純な面白さにすぎないのかもしれない。それでも、こうした面白さを醸し出す作家はやっぱり日本には他にいないのかもしれない。つまり、彼こそは新しい面白さを作ってしまった作家なのかもしれない。

村上春樹の小説がもつ面白さなんて、昔から敷かれていた鉄道網と同じくらいにありふれた面白さだと思っていたかもしれないが、実際これはじつに個性的な面白さなのだ。しかも、村上春樹が個性的な非常な苦心の末に形作った面白さなのだ。「そんなことを今さら言うな」と私は私自身に呆れるが、そんなことを改めて確信している。

それはそうと、「ねじまき鳥クロニクル」には、加納マルタと加納クレタの姉妹というのが出てくる。考えてみれば、これって「かのう姉妹」(叶姉妹)じゃないか! 「ねじまき鳥クロニクル」における加納姉妹もまた、よくわからないのにもっともらしい存在で、「だからなんなんだよ、あの姉妹は?」と言いたくなる。(叶姉妹と同じ)

というわけで、叶姉妹のよくわからないテレビをダラダラ見るのもいいが、加納姉妹のよくわからない小説をだらだら読むほうが、けっこうマシではないか、平均的日本人よ。

というか、どうして私たちは(いや、私は、ということなのだが)、叶姉妹を忘れることがないくせに、村上春樹ねじまき鳥クロニクル」の加納姉妹のほうはこんなに長く忘れていたのだろう。よくもそんな不公平な人生を送ることができたものだ。テレビなんてまったくもう早く死んでください。

1Q84』のほうは近所の古書店に売った。1巻と2巻が400 円ずつ、3巻は600円だった。次また文庫でも出たら読もう。なぜこのタイミングで読み返さず、あろうことか売り払ってしまったのだろう。東京は部屋の空間の維持こそが最もコスト高なのだ。