東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★評伝 川島芳子

https://www.amazon.co.jp/dp/4166606255

評伝 川島芳子』(寺尾紗穂 2008年)を読んだ。福田和也『地ひらく』、加藤陽子満州事変から日中戦争へ』と読み継いできた流れ。その間、ロシアのウクライナ侵略が始まり、旧満州への関心は複雑に深まっている。

満州とウクライナ、労働と戦争 - 東京永久観光

 

川島芳子について読んだのは初めてのこと。この人物はもうぜひ大河ドラマにしてほしいと思わせる。旧清朝皇室と中国国民政府と日本軍部の三すくみで進行する歴史と生涯。極めつけの波瀾。妖しくもあり怪しくもある。

川島芳子は当時セレブリティとして国民の耳目を集めた。マスコミは常に追いかけ小説や映画にも描かれた。「男装の麗人」のイメージはその影響も大きいが、同書は多数の資料を丁寧に遠慮がちにつなぎ合わせ、虚像に似ているような似ていないような、むしろもっと痛切なような実像が浮かんでくる。

 

なお、私の近ごろの旧満州への興味は、以下の映画から始まったのだった。

★戦争と人間(映画) - 東京永久観光

 

そんなわけで、今ウクライナ侵略に喝采するロシア国民の姿が、かつて中国侵略に喝采した日本国民の姿に重なる、ということを何度か思ってきた。今回はそれに加え、川島芳子という特別な境遇の人物に、メディアと国民の興味が著しく燃え盛る光景が、戦時の日本なのか現在の日本なのか、わからなくなっている。