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【2019 輪廻転生】

自然の法則はあるが社会の法則はない


ソ連が実在した時代に生きていたというのは、イエスが生きていた時代に生きていたというくらい、レアなことなのかもしれない。キリスト教がこれまで2千年生き残ってきたように、マルクス主義もこれから2千年生き残っていくかもしれないのだから。

しかし、神様の戒律がこの世界を守ったり正したりしてくれる保障なんて本当はないように、社会の法則がこの世界を守ったり正したりしてくれる保障もないことを、腹に据えておかねばならない。つまり、トランプやプーチンが排除される必然性はない。むしろトランプやプーチンの支配が世界の必然だろう。

自然現象のほうは法則が支えている。つまり原子や電子の動き、太陽や月や地球の動きなら、根本的で統一的な法則に従うので、余計な心配はいらない。だから社会現象にも、神とか天とか義とか道とかそうした何らかのありがたい隠れた法則を、つい仮想して期待してしまうが、ないよね、たぶん。

地震や水害が神の罰ではないように、爆弾や首斬りやいじめや残業が神の罰ではないように、トランプもプーチンもキムジョンウンも神の罰ではないのだ。世界の平和を祈るけれども、祈れば神様がうまいことしてくれるわけではなく、祈った勢いで自分か他の誰かが何かしないといけない。

まとめ的に続けると:私はどちらかといえば無神論の立場であり、また、どちらかといえば資本主義を受け容れている。しかし、なにかの拍子に神に祈ったりするし、なにかの拍子に「労働者よ団結せよ」とか言いたくなる。

世界全体では、神をまったく信じない人は、どれくらいの割合だろう。共産主義にはっきり立つ人は、どれくらいの割合だろう。どちらも多数派ではないように思う。そこには、無神論が信仰に比べて人工的に感じられることや、共産主義が資本制に比べて人工的に感じられることが、影響しているかも。

……さて、というか、それにしても、進化というのは法則なのか? 人間を誕生させた神様以外の理由が初めて見つかったわけで、法則と呼ぶならそれは究極の法則なのだろうが、しかし、進化は自然現象の法則にはとどまらず社会現象の法則にもとどまらず、もっと当たり前のなにかだ。「三角形は四角形ではない」くらいの。


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=追記=(2017/07/30)

物理学以外でニュートン的な研究方法に成功した数少ない学問があり、その1つが経済学(特に計量経済学)だとされている。その点では「社会の法則はない」とは言い切れないことになる。