「ツイッターなんて」と思いながらやめられない理由を考えるのに、この本は参考になった。キーワードは「ループ」や「フィードバック」といったところ。
ちなみにその時のつぶやきは以下のごとし。
世界の人がこぞってぶつぶつ書き込んでいるのは何のため? よくわからないけど、そんなこと言ったら、独り言だって何のためかわからない。誰かとの会話だって目的はさほどはっきりしているわけではない。ツイッターはヘンだが、独り言もヘンだし、会話もヘンなのだ。
「ブログもミクシーもツイッターも、やめようと思えばやめられる」…のだろうか? はたして。そもそもなぜ本を読むのかも、目的を考え出すとだんだんわからなくなってくる。インプットしたものやアウトプットしたものは脳になんらかの痕跡を残す(少なくとも自分の脳を通り過ぎてはいく)。だが、いくら読もうが書こうが結局消えていくだけじゃないか、という空しさと不安を捨てられない。これは「どうせ人は死んで終わるのだ」という空しさに近い。そして、読んだり書いたりが本当に空しいと感じられてくるのは、自分がいつか死んでしまうことを思うからかもしれない。生きてさえいれば、読んだり書いたりしたことのすべてはどこかに痕跡が残っていると信じることもできるのだが、死んでしまったら、それすらかなわない。(…ちょっと仕事が暇だと、いろんなことを考える)
ともあれ。この本を読んでなにかが私のところに押し寄せてきた。受けとめた証拠にもっときちんと書いておきたい。でも、押し寄せてきたものを別のどこかに送り流してみることで、それに代えてもいいのかなと、ふと思う。自分の心というものは、自分自身で言葉をつづる中に現れてくる可能性があるように、言葉をインターネットのループに任せていく中に現れてくる可能性だってあるにちがいない。
ということで→ http://twitter.com/#search?q=%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%A2
★ナイフ投げ師/スティーヴン・ミルハウザー(2008)
★マーティン・ドレスラーの夢/スティーヴン・ミルハウザー(2002)
文学を読むという趣味は長く熟成されてきて裾野も広いとおもうのに、世間の話題にはあまりにもならない。女子カーリング程度には盛り上がってもいいのに。実際そうなるのは村上春樹くらいか。だが、たとえばミルハウザーには、寡黙なまま熱中している読者が間違いなく大勢いるのだろう。私はカーリングと同じく新参者だが、初めて読んでその魅力が共有できたように思う。オリンピックが終わってもまだ読むだろう。かえって人気競技になってほしくない気持ちがわかるのも面白い。ただ、黙っているのは惜しい。(ともに12月ごろ読んだ)
★ 思索紀行 ――ぼくはこんな旅をしてきた/立花 隆(2004)
古い雑多なルポ記事の寄せ集めだが、なにかとキョーレツで圧倒された。特に笑ったのは以下。「無人島生活六日間」に入る前夜の記録。
《ホテルに入ったのが午後八時半ごろ。食堂が九時までしかやっていないというので、部屋に入らず、食堂に直行し、ひたすら飲みかつ食う。編集者と二人で、刺身の盛合わせ、キビナゴの刺身、牛刺し、豚骨、生ウニ、それに上寿司一人前ずつを食べ、生ビールの大ジョッキにつづいて、白ワインの小ビンを四本飲み干す。明日出征する兵士か、ムショ入りするヤクザかという感じで、閉店時間ギリギリまで、かつ胃袋の収容能力ギリギリまで、詰め込みに詰め込む。わずか三十分でこれだけのものを胃袋におさめる我々の姿を店の人が呆然と見ている。
閉店時間までに、動くのも苦しいほど食べ、かつへべれけに酔う。部屋に入ると、ほとんどそのまま寝てしまう。明日からは早寝早起きの生活をしなければならないのだから、早く寝るにこしたことはない》
こんな旅というか、こんな食をしてきたらそりゃあガンにもなる。
旅に関する基本の思いは序論として掲げられている。《一言でいうなら、この世界を本当に認識しようと思ったら、必ず生身の旅が必要になるということだ》。とはいえ、この序論もとても一言では終わらずダラダラと80ページに及ぶ。ただまあ、立花隆という人はずっと、こうしてひたすらガンガン書きつづる迫力でこそ人を説き伏せてきたのかもしれない。
《日常性に支配された、パターン化された行動(ルーチン)の繰り返しからは、新しいものは何も生まれてこない。知性も感性も眠りこむばかりだろうし、意欲ある行動も生まれてこない。人間の脳は、知情意のすべてにわたって、ルーチン化されたものはいっさい意識の上にのぼらせないで処理できるようになっている。そして、そのようにして処理したものは、記憶もされないようになっている。意識の上にのぼり記憶されるのは、ノヴェルティ(新奇さ)の要素があるものだけなのである。
旅は日常性からの脱却そのものだから、その過程で得られたすべての刺激がノヴェルティの要素を持ち、記憶されると同時に、その人の個性と知情意のシステムにユニークな刻印を刻んでいく。旅で経験するすべてのことがその人を変えていく。その人を作り直していく。旅の前と旅の後では、その人は同じ人ではありえない。》
★13日間で「名文」を書けるようになる方法/高橋源一郎(2009)
明治学院大学で行った講義「言語表現法」から生まれた本。…となると、その前任者だった加藤典洋の『言語表現法講義』がぜひともまた読みたくなる。
ネット上の近所で性別年齢を問わず複数の人が勧めている様子だったので、読んでみた。まだ1・2巻だけだが、私も感動した。
上の流れで読んだ。映画は公開当時に見たがこの原作は初めて。『海街diary』もそうだが、他人と自分の気持ちや関わりについて、繊細かつ正確な観察があり、最後は言葉として決定打になる。
★海辺へ行く道/三好銀(2009)
まだうまく感想が言えない。
★チェンマイ アパート日記/なかがわみどり、ムラマツエリコ(2007)
チェンマイに1か月ほどいるのだが、「ホテルに泊まって旅行」ではなく「アパートを借りて生活」というのがポイント。その体験を漫画と写真で構成。荷物のパッキングが要らないとか、買った食品を冷蔵庫にとっておけるとか、なるほど旅行者とは違う。だらだら旅のツボを突いた記述が多く、読むだけで面白いが、余裕があれば実際の旅としてトライしたい。家賃は記してないがネットで調べると2〜3万円か。
★幕末史/半藤一利(2008)
坂本龍馬についてだけさっと。同著者の『昭和史』がとても面白かったので、これもいずれじっくり読みたいが。
貧乏だから戦争に行く、などなど。国の医療保険や災害救助のひどい現状も。すでに続編が出ている。その関連記事が雑誌『クーリエ・ジャポン』にもあった。ちなみに著者は川田龍平氏と夫婦。
★わらの犬 地球に君臨する人間/ジョン・グレイ(2009)
神を信じ科学を使う人間も地上の生物として特別ではないので滅んでもしかたないし滅んだほうがいいかも、といった趣旨。ぱらぱらと読んだだけ。
★貨幣と精神−生成する構造の謎/中野昌宏(2006)
序章を読む。たとえば意識や言語がどう生成されたか、それは謎というしかないが、同様の謎は、社会というもっと広いステージにおける創発現象にも潜んでいるのだと、気づかされた。とりわけ貨幣はなぜ出来たのか。
上との関連で。柄谷行人、岩井克人との鼎談「マルクス・貨幣・言語」。面白いが、やはり柄谷自身の書を読んだほうがいい。それにしても、こうした考察は柄谷行人の独壇場かと思っていたが、上の本などもあるのだ。
★比喩と認知 心とことばの認知科学/レイモンド・W. ギブズ Jr. (2008)
★アブダクション―仮説と発見の論理/米盛裕二(2007)
◎参考 http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/04/post-976.html
★人はある日とつぜん小説家になる/古谷利裕(2009)
→http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20100228/p1
★クォンタム・ファミリーズ/東浩紀(2009)
→http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20100211/p1
★音楽の聴き方/岡田暁生(2009)
→http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20100129/p1(関連)