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【2019 輪廻転生】

★日経サイエンス 2018年12月号 特集:新・人類学「ヒトがヒトを進化させた」

《人間は人間が作った》すなわち《自らの反応を自ら持続させる化学反応にも似た終わりのないプロセスが人間の認知能力と文化を進めてきたのだ》。(K.ラランド)

さらに言い換えれば、《文化の継承は遺伝子の継承と全くかわらない》という見方。素直に激しく同意だな〜。

http://www.nikkei-science.com/201812_032.html

引用記事は霊長類の他の動物との違いや人間の他の霊長類との違いといった広い視点なのだが、《自らの反応を自ら持続させる化学反応にも似た終りのないプロセス》と言われると、連続ツイートが止まらないとか、リツイートがカスケードするとか、そんな日々をそう悲観しなくてよいのかと、安堵する。

いやまったく、たしかに人間は何億年にも及ぶ遺伝子の進化で誕生したのだけれど、私たち一人ひとりは数十年あるいは数年の間にどれほど「進化」したことか。あるいは「淘汰」されたことか。電車通勤に適応し、ウィンドウズに適応し、コミュニケーションスキルに適応し…


この特集「新・人類学」、最後のほうに、AIについて人間との融合を予測する考察があった。

http://www.nikkei-science.com/201812_088.html

サイバー空間に、自らの分身のような秘書のような「デジタル・ダブル」といったものが成立し、自分の生活や人生を、いわばリハーサルしてくれるような、そんな状態の予測だ。

これもしかし、私たちはすでに実感・実践しているところがある。たとえば、観光旅行とか、飛行機やホテルの予約はもとより、時間単位のスケジュールを組み、どこで何を見て何を食べてどう感動するかも、計画の段階で、先に一回体験してしまう。


「こんなとんでもない知的生命体は、少なくとも天の川銀河にかぎっては、たった1つにきまってるよ」という主旨の記事が、「人類という奇跡」(J. グリビン)

http://www.nikkei-science.com/201812_094.html

その理由を、銀河における太陽の位置や地球の岩石成分やプレートテクトニクスなどから特定していく。これは、アメリカ大陸は縦に長いけどユーラシア大陸は横に長いから、結局まわりまわってインカはスペインに滅ぼされたのです、という『銃・病原菌・鉄』の超拡大バージョンかもしれない。

しかしそれらと並んで、ある細菌が、別のある細菌(古細菌)を、自らの内部に取り込んで、真核生物が誕生したことも、とにかく超レアな幸運だった、と指摘されていたのが、私としてはとても新鮮でとても感動した。

こうみてくると、もしや私たちは私たちの分身を自らのなかに取り込むことで、7億年ぶりにまったく新しい進化を遂げるのか? という大げさな思いも浮かんでくる。いや、細菌と古細菌のどちらが先でどちらが主かもわからないらしいように「私の分身AIが、私を、内部に取り込む」のかもしれないが。


ではここで1曲いきましょう ♪「人工知能発達障害」(…そんな歌はありません)


 *


かたや、『新潮』2018年12月号は、「差別と想像力――「新潮45」問題から考える」を特集していて、開いてみたら、千葉雅也の連続ツイートが載っていて、「おお!」と にわかにご近所感(私のツイッター空間のご近所)がわいた。

その千葉雅也さんが、まさに先ほど、この特集の一言レビューを連続ツイートしていた、それを読むと、なんとなく他の人たちの内容が想像できたので、もう読まなくていいかという気になっている。

https://twitter.com/masayachiba/status/1060167087287492610

たとえば、小説というものについて、私たちは、そこに何が書いてあるのかはかなりわかるけれど、それが何なのかは実はほとんどわかっていない(私はそう考える)。それに比べたら、差別というものについてなら、私たちは、それが何なのかが、実は「かなりわかる」のだと思う。

そうするとしかし、小説をいう「とらえどころのない」ものに勤しんでいるはずの人たちが、差別という「とらえどころのある」ものを、扱い損ねているのだとしたら、それは何を意味するか。

いやそうではなくて、「差別」というのは、「小説」と同じくらいには、「難しい問題なのだ」という見方もあるだろう。そういうふうにも思う。しかし、その場合は、「差別が難しい」というのは、急に奇妙なたとえをするけれども「統計が難しい」というのと、似ているのではないか。私はそう考える。

言い換えれば、私たちは、統計という非常にやっかいなものに日々さらされていながら、それを十分正確に理解していないことが多いけれども、しかし「統計は何を意味し何を意味しないか」は明瞭だ。さらにいうと「今の私に、統計の何がわかっていて何がわかっていないか」も明瞭なはずなのだ。

それと同じく「差別は何を意味し何を意味しないか」も明瞭だ。さらにいうと「今の私に、差別の何がわかっていて何がわかっていないか」も明瞭なはず。もちろん私は個人的に、統計は予想より難しいと思うし、差別も予想より難しいと思う。とはいえ、統計はマジックでも神秘でもない。差別も同じ。


もう1曲 ♪「物理学者は人工知能https://www.technologyreview.jp/s/111126/an-ai-physicist-can-derive-the-natural-laws-of-imagined-universes/sbm/?id=Fee7SZFuQFWHgx8CtCDEq7mxCRtWTorJKaxfs1xHPHe&article=111126&nonce=33891&signature=3Ur9WJE4cS_EGlnGAzwVgKp8IymUJnbIr4ZSeaga7l1