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【2019 輪廻転生】

身体そして進化の観点から(人工知能)

 http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20180527/p1 から続く


人工知能とは』(近代科学社)は、人工知能をめぐる本質的な問いを、13人の研究者が、それぞれ自ら設定し、言葉を厳密に選んで答えていったシリーズで、人工知能学会誌に連載されたものらしい。

 人工知能とは (監修:人工知能学会)

表紙のアトムの子供っぽい(?)みかけとは真逆の一冊なので、驚嘆する。

人工知能の研究と実現には、身体というものの絡み合い、かつまた、進化ということの絡み合いが、不可欠なんだ! という立場の研究者が、わりと多いようなのが、ちょっと意外にも思われ、しかし、さもありなんとも思われ、いろいろ考えが渦を巻くが、とにかく勉強になるし非常に面白い。

人工知能と身体との絡み合いを不可欠と考える研究者」と書いたが、浅田稔さんはその代表だと思われる。次のように述べている。

《重要なポイントは、獲得すべき行動をロボットの脳に直接書き込むのではなく、他者を含む環境を介して(社会性)、ロボット自身が自らの身体を通じて(身体性)、情報を取得し解釈していく能力(適応性)と、その過程を持つことです(自立性)》(ロボットインテリジェンスを実現するには?)

一方「進化」という観点では、《生命は知性を進化させたが、生命なき知性というのは発生していません》と述べる池上高志さんの発言に刮目させられた。《生命をまず発生させよう! それが人工生命です。直感的には生命を作るほうが知性を作るよりも簡単なはずです》

では、生命体(生き物)の知能はコンピュータなどによる人工的な知能と、どこが違うのかというと、進化によって獲得された点がもちろん違うわけだが、もう1つ、「ラベル貼り」や「記号操作」ではないという点を、池上さんは重視している。

そのうえでさらに興味深いのは、だいたい、脳も、脳を模したニューラルネットも、随時変化するなんらかのパターンが存在するだけで、記号操作やラベル貼りとは無縁ですよ、とみていること。脳の仕組みは謎だが、ニューラルネットもやはり、たとえようもなく不思議な仕組みということになろうか。

しかし、浅田さんや池上さんの顔面強烈パンチとは違うものの、武田英明さんの見解は、あっけにとられて腰が砕けるといったふうの、まったく独特のインパクトがあった。


 http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20180607/p1 に続く