東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★映画『メッセージ』(あなたの人生の物語)


原作を読んですでに知っているはずのストーリーを、映画として改めてドギマギしながらたどっていく。――待てよ、これって「あなたの人生の物語」のテーマそのものを体験することだ! 

……というわけで、映画『メッセージ』をやっとディスクで鑑賞。しかし、しかし……。

そのもどかしさを、下のレビューがうまく言い当ててくれている。
https://wired.jp/2017/05/19/arrival-review/

《原作に示されるヘプタポッド文字は、多数の漢字が立体的に編み上げられた、一種の曼荼羅のような「全体性」を示唆した図象》《そうした感覚の直感的把握は、西洋人の製作スタッフたちには難しかったようだ》(池田純一)=同レビューより引用=

そもそも映画と小説では表現の得意な点が異なるということに思い当たる。しかしそれより「あなたの人生の物語」のテーマにとって決定的な違いは、映画は「時間の流れ」とともにしか鑑賞できないことだ。すなわち、たった1つの決められた速度と、たった1つの線的な方向によってしか体験できない。

小説はわりとそうではないのだ。速度も方向もわりと自在だ。とはいえ、すでに見た映画を繰り返し見る段階にくれば、すでに見た小説を繰り返し読む段階と同じ境地に達する。その境地こそが「あなたの人生の物語」が言及している境地に近いと思われる。

さて問題は、私たちの本当の人生はどうなのかだ。私たちは、結局のところ、速度も方向もたったひとつしかないこの「時間の流れ」とともにしか、生きられないのだろうか。「そうではない」と言いたいようで、やっぱり「そうでしかない」とも言いたくなる。

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原作を読んだときの感想。

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母「へえ、お話がどう進むかがとうにわかってるんだったら、なぜわたしが読んであげなきゃいけないのかしら?」 娘「だって、聞きたいんだもん!」 =原作より引用(文庫 p.265)=