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【2019 輪廻転生】

★分析哲学入門/八木沢敬

 分析哲学入門 (講談社選書メチエ)


分析哲学というのは、いってみれば、言語現象のゲノムを見出そうとしているのかもしれない。それと対比して文芸評論などは、言語現象のいわば生物レベル的生態レベル的な機序を記述するものだろう。

ゲノムというのは味もそっけもないものだが、それが分かるというのは大変なことだ。なぜなら絶対的な原理だから。

自動車やテレビを発明するのに比べ、たとえば相対性理論の発見なんて味もそっけもない。しかし相対性理論は絶対的な万物原理にかなり近いので、その原理を使えば自動車やテレビなどはるかに超えた創造と破壊を普遍的にもたらす。

分析哲学は実はそれくらい凄いものだと思われる。分析哲学というと堅いが、要するに「理屈」のことだ。「理屈ばかり言うな」というときの「理屈」のこと。

分析哲学は人を一瞬のうちにガバッと抱き込む魅力を持っている。いったん抱き込まれると、拒みがたい相手と恋に落ちるように、食事中も通勤通学中も入浴中も分析哲学のことを考えなくてはいられないし、もっともっと分析哲学のことを知りたくなる》

分析哲学なんて乾パンをかじるくらい味気ないと思う一方で、同書を読むと、上に引用した思いが私にも少しわかる。

◎参考書評:http://d.hatena.ne.jp/sakstyle/20111212/p1