★美しい夏 キリシマ/黒木和雄(2002)
「日本映画の底力」といった賛辞があったが、たしかにそのとおり見ごたえがあった。70年代の『竜馬暗殺』『祭りの準備』が衝撃的だっただけでなく、晩年のこの一作も文句なく人をうなずかせるもので、黒木監督への敬意と親しみが今ごろになって形をとりはじめた。
何度か述べているが、あの戦争は今なお日本国民にとって自身の歴史の土台であり、そしてまた映画の題材としても大きな土台になってきたと思う。もちろん時代はすっかり新しい。そんなものとは縁の切れた歴史観や映画観がもはや傍流でもないだろう。しかし昔の人は昔の日本が忘れられるほど柔軟でも浮薄でもない。
というわけで、これも見た。演劇っぽい展開であることや、落ちがはっきりしていることが、あまり成功しているとは思えなかったが、宮沢りえも原田芳雄も浅野忠信も好ましいので、とりあえずよし。
関連はないが前後して あるオペラを見に行った。この映画では浅野がほとんど棒立ち棒読みに近い演じ方をさせられていたので、あれがもしオペラだったらどうするんだと、余計なことを考えた。
感想こちら → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20100214/p1
昔も一言 → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20060824/p1
★許されざる者/クリント・イーストウッド(1992)
このところイーストウッド映画をよく見る(高評価の監督作をどんどん作っているからだが)。その長い経歴でも重要とされるこの名作を初めてちゃんと鑑賞した。日本ではあの戦争を描くことが映画作りの総力戦にふさわしく思えるのに似て、アメリカ映画ではやはり西部劇には特別な意気込みを誘う何かがあるのかもしれない。
参考:http://d.hatena.ne.jp/Geheimagent/20080511/p2
★荒野の用心棒/セルジオ・レオーネ(1964)
クリント・イーストウッドの銀幕デビューにして、マカロニ・ウェスタンの誕生ともなった記念碑的な映画。当然とっくに見たつもりだったが、まだだった。
列車強盗などが無性にエキサイティング。また、メキシコのマパッチ将軍の一団は破天荒で残酷でどこか伝奇的なムードだった。そんなことから、長い映画だが飽きなかった。
この映画は「最後の西部劇」と呼ばれる。だが上の『許されざる者』もそれを標榜したという。つまり、アメリカ映画そして西部劇の歴史もまた長い、ということなのだ。
★十九歳の地図/柳町光男(1979)
21世紀に70年代の日本映画を見るというのは、先進国の人が途上国を観光するようなもので、もう無条件に面白い。この1作も絶対お薦め。
★突撃/スタンリー・キューブリック(1957)
馬鹿げた上官が馬鹿げた命令を行い、しかもその罪を押し隠すため、こともあろうに無垢の誰かにその罪を着せ、問答無用で殺してしまって事を済ませようとする。日本の軍隊や日本の警察だけでなく、イギリスの軍隊もそういうことをしがちだったということだろう。ただし、完璧に絶望の思いだけをもたせて終わる映画ではなかった。だけどそこはキューブリックっぽくないとも思った。
★レベッカ/アルフレッド・ヒッチコック(1940)
タイトルしか知らなかった有名作だが、こんな話だったのか。不在の人物がじわじわとありありと浮かび上がる。これまたひとつ徹底して偏執的な描き方。これがヒッチコックか。
★自転車泥棒/ヴィットリオ・デ・シーカ(1948)
久々に見た。イタリアの終戦直後の街と映画は日本のそれに似ていると、いつも思う。
★バーバー/コーエン兄弟(2001)
カラーフィルムで撮影しモノクロに変換したという。そのためか真っ黒と真っ白のツートーンに近いような画面になっている。しかしそんなことより、夫は宇宙人と政府の陰謀でおかしくなったのよと、わざわざ言いに来た奥さんのシーンが、飛び抜けて印象に残っている。それと、深窓の令嬢的なスカーレット・ヨハンセンがいきなり…。
★カリスマ/黒沢清(1999)
こちらに少し書いた。→ http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20100104/p1
ところで、DVDの監督紹介のコメントに「黒沢監督の映画には"人間の生きざまを描く"という確固たる精神が貫かれている」とあった。安全パイというべき紋切り型の評がこれほど外れてしまう監督は他にはいないだろう。
劇場で見たときの感想。→ http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20081002/p1
今回DVDで見直したが、感想はいまだ生煮え状態。
★神田川淫乱戦争/黒沢清(1983)
asin:B000UULXHE
感想もはや不能。ちなみに、1983年にしては貧乏くさいというか70年代っぽい。
中国雲南省を旅するときの脱力と唖然。けっして誇張とも言えない。そして、あのような奇譚が本当にあったとしても不思議ではない。少なくとも、あれくらいの遭遇を本当に求めて彼の地を旅する人は多い。
★大阪ハムレット/光石富士朗(2008)
原作は森下裕美の漫画だったのか、なるほど! 岸部一徳はもちろんいいし、兄弟3人ともとてもいいのだが、加藤夏希がまた予想外によかった。
★晩春/小津安二郎(1949)=NHKで放映=
asin:B0009RQXJQ
怖い顔をしても原節子。壺のシーンが謎とかいうが、そもそも紀子(原節子)がなぜ嫁に行きたくないのか、見る人はみなしっかり納得できるのだろうか? 「紀子は心が病気なのです」という解釈のほうがすっきりうなずけるのではないか。
とはいうものの、良い映画、楽しい映画だった。杉村春子ががま口を拾うシーンが可笑しい。正月になぜか餅を食べるのと同じく、なぜか知らないが誰しも小津や原節子が好きなのだ。
★麦秋/小津安二郎(1951)=NHKで放映=
asin:B0009RQXK0
これまた紀子は精神が失調していると思いたくなる。といっても恋愛や結婚はみな心の失調かもしれないが。しかしそれはそれとして、ストレスで気がカサカサしているときに、小津の映画はいい。
ところで、原節子が花嫁姿になったのは『晩春』だけか? 娘が文金高島田になって父親に頭を下げるなどということは人生で一度きりの場合が多かろうが、映画の架空のシーンとしてもそう何度もあるものではなく、嫁入りの場面で女優は現実のそれと同じくらい緊張するのではなかろうか。映画撮影も結婚式も日常というよりは非日常だし。
むしろ原作が読みたい。
参考→http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2010/02/post-8932.html
★フォレスト・ガンプ/ロバート・ゼメキス(1996) asin:B000FBHTOO
「映画史上の大傑作」といった言及をはてなのどこかで目にしたので、久しぶりに見てみた。が、やっぱり公開時と同じでノリきれなかった。残念。
胸焼けはするけど未消化というかんじ。原作は面白かった記憶がある。
★フィッシュストーリー/中村義洋(2009)
★動くな、死ね、甦れ!/ヴィターリー・カネフスキー
これだけは劇場で見た。感想またいずれ。
http://www.espace-sarou.co.jp/kanevski/top.html
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相変わらずDVDばっかりみる。仕事せねばならないのに仕事する気にならないとき、どうせ何もせずやもやして時間を費やすよりは、DVDでもみて時間を費やそうと思った結果の積み重ね。
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↑ 映画DVD鑑賞記録 2009年 (5) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20091201/p1
↓ 映画DVD鑑賞記録 2010年 (2) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20100404/p1