★小さな恋のメロディ(1971)
掘り出しものだった。なぜこれまでスルーしていたのか。二人の何気なくも躍動感に満ちた動きを、コンマ1秒の正確さで切り取り繋いでいる。金魚を放つ瞬間とか。みている方の心もいきいきと動き出す。ロンドンの街の人がさっと映り込んでくるのも素晴らしい。トレーシー・ハイド、当時11歳だったそう。
授業や教師のふるまいの古めかしさ。子供たちの純粋さと残酷さ。男子と女子の表向きの敵対ぶり。1971年のイギリスの学童世界は、同じ時期の日本のそれとそっくりだったのだと知る。どちらも縦笛を吹く。体罰まである。運動会の競争はいやだけど頑張る。マーク・レスターの同級生男子がまたみんなバカで多感で、私も自らの遠い学童期を思い出さずにはいられなかった。
最後の大騒動ももちろんよい。どうやって終わるかと思っていると、なんとトロッコで二人が逃げていく! コスモスも美しかった。
そうして改めて聴く、ビージーズの「メロディ・フェア」。この愛すべき歌に私は、まだ見ぬこの映画のよさをぴったり予測・感知していたのだと言いたい。メロディはヒロインの名でフェアは美しいという意味らしいと、そんなことを初めて知ったにもかかわらず。
どうせ英国の裕福家庭の小さな紳士淑女という設定なんだろうと思い込んでいたが、両家ともべつに金持ちではなく親も凡庸。ただ、品はないけど根は善良。要するに私たちの多くの家庭と似ている。
この映画がイギリス本国でぜんぜん評価されなかったというのは信じがたい。
★ヒポクラテスたち/大森一樹(1980)
今は亡き古尾谷雅人が医学生役で主演。その先輩陣を内藤剛志や斉藤洋介が演じており、回想シーンで無理に若作りしたかのようだが、実際に若い。柄本明はちょっとひねた学生役だが、やはりそもそもが若い。
そしてなにより、キャンディーズ引退後の再デビューだった伊藤蘭。全編を通して花を咲かせる。
ちなみに彼女が喫茶店でたばこを吸うシーンがある。その銘柄も「蘭」。昔そんなたばこがあった。それにしても医師にも医学生にも喫煙者が多すぎる。あるいは脳のMRI機器が病院に初めて導入され自慢げに眺めるシーンもある。日本はまだそんな時代だったのだ。
なお「へえこの人が」という人物はほかにも次々に出てくる。北山修、鈴木清順、それに手塚治虫まで。監督の写真もさりげなくもなく出てくる。お楽しみに。
けっきょく普通の学生の普通の青春をそのまま描くような映画だからこそ、しみじみ見てしまうのかなと思った。現在では「そんなの企画としてありえないよ」とか言われるのかもしれず、そうだとしたらつまらない。同時代に映画館でみてそれ以来の鑑賞だと思う。
★フィツカラルド/ヴェルナー・ヘルツォーク(1983年)
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ことごとく破天荒。唖然とするばかり。消え行くロマン主義の強烈な残照? ロマン主義とはテクノロジーやグローバルの対義語だ。つまりハイテクでなくローテク、文化の統合でなく文化の齟齬。そうしたものは21世紀にはもうない。少なくとも流行らない。
かつて郷里の映画館で見たが、あのころ映画館では眠ってばかりいた。だからこの映画の現実とは思えぬようなシーンは、私にはまさに夢を見ていたかのごとき記憶になっていた。
★アンダーグラウンド/エミール・クストリッツァ(1995)
→ http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20130906/p1
★水の中のナイフ/ロマン・ポランスキー(1962)
★反撥/ロマン・ポランスキー(1965)
★袋小路/ロマン・ポランスキー(1966)
ポランスキーのディスクがいくつかTSUTAYAに出ていたので続けて借りた。偏執的テイストは独特で、映画の外にある私の現実など全然どうでもよいものに感じられてくる。すべてモノクロ。『反撥』のカトリーヌ・ドヌーブが最も印象的だったか。
★娘・妻・母/成瀬巳喜男(1960)
靖国をめぐる罵り合いも面白いが、そんなことより、昨日DVDで見た成瀬巳喜男『娘・母・妻』(1960年)の熾烈にして悲惨な闘いのほうが、よほど面白かったので、国民すべてにおすすめです。これホント。(ちょうど安倍首相の靖国参拝のころにみた)
◎リンク:http://songsf4s.exblog.jp/14758851/
★女の中にいる他人/成瀬巳喜男(1966)
奇妙なミステリーでモノクロ、となると、ポランスキーをみた直後だから、なんだかポランスキーっぽく感じられた。こちらは新珠三千代。
★無言歌/王兵(2010)
そういえば、毛沢東は途方もない存在だと今なお思うが、そんなことより、その前の晩に見たDVDの王兵『無言歌』がまた、途方もなさの果ての果てで風が吹いているような、こっちが無言になるしかない恐ろしさだったので、これまた国民皆様におすすめ(といっても中国国民は鑑賞不可らしい)
◎公式サイト:http://moviola.jp/mugonka/
◎毛沢東同志685元 https://pic.twitter.com/pjF8l6gqUP
★風立ちぬ/宮粼駿(2013) =劇場鑑賞=
→ http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20130904/p1
★もののけ姫/宮粼駿
★風の谷のナウシカ/宮粼駿
→ http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20130914/p1
★凶悪/白石和彌(2013)=劇場鑑賞=
『殺人の追憶』に並ぶ映画が日本でも誕生した、といったことを誰かが述べていたが、たしかにそれくらいスゴい。ただ、雑誌記者が死刑囚に急に怒りを向けだしたところで私はなんとなく白けた。そこがどうも……
たまには黒澤明が見たくなる。
★天国と地獄/黒澤明(1963)
実に久々。やっぱり面白い。
★赤ひげ/黒澤明(1965)
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初鑑賞。山本周五郎っぽい。
★影武者/黒澤明(1980)
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これも初鑑賞。
黒澤明のこってり味が続くと、また小津安二郎のあっさり味に戻りたくなる。
★小早川家の秋/小津安二郎(1961)
なにわの喜劇の軽妙なイメージだが、最後には喪服の一団が嵐山の橋を渡っていったりする。ラストカットは墓場でカラス。
★関東無宿/鈴木清順(1963)
監督の美術センスはこの頃から溢れだしたと言われるが、それ以上に松原智恵子らの少女漫画センスのほうが見ものかも。
★十八歳、海へ/藤田敏八(1979)
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70年代あたりのこの種の青春センスは当時濃厚で若者の普遍と感じられたかもしれないが、その後あれよあれよと消え失せた。この先ももう復活しないだろう。繰り返さない歴史もあるのだ。この監督やこの映画の森下愛子や永島敏行はその特殊センスの典型だった。だからもう「黙って味あうがよし」としか言いようがない。(上の『ヒポクラテスたち』も時代は同じだが、この映画ほど妄想的ではない)
★告発の行方(1988)
アメリカの田舎町のパブ。因習的で暴力的な人々の言動の底にあるものを探っていくことになるのだが、でも結局、裁判に勝利して万歳となるところで、どうも底が浅く感じられてしまった。
★ミシシッピー・バーニング
NHKで放映。ずっと見たかったのだが、やはり見ごたえがあった。再鑑賞。
★寺内貫太郎一家(TBSドラマ)
DVD1本だけだが、もっと見たい。
★点と線(1958)
原作が書かれたのと同じ時代の西鉄の駅前や海岸の風景を見られるのが興味深く、期待は膨らだが、やがて夫婦の愛憎ドラマが中心に出てきて、原作とは違ってつまらない終わり方になった。
★戦国自衛隊(1973)
武田軍がおそろしく強かった。原作のキモとなる設定を欠いているのはどうかと思うが、賑やかさを楽しむ映画だろう。
★回路/黒沢清(2000) 再鑑賞。
★燃えよドラゴン(1973)
2013年はドラマを3つ(以下)も堪能した珍しい年でもあった。
★あまちゃん(NHKドラマ)
★最高の離婚(フジテレビドラマ)
★半沢直樹(TBSドラマ)
→ http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20140101/p1(あまちゃん)
→ http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20130327/p1(最高の離婚)
→ http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20130416/p1(最高の離婚)
↑映画DVD鑑賞記録 2013年(1) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20130423/p1
↓映画DVD鑑賞記録 2014年(1) http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20141016/p1