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【2019 輪廻転生】

★万物の黎明/デヴィッド・グレーバーほか

『万物の黎明』を読み始めた。

「人類史を根本からくつがえす」ーーこの狙いは全開にして鮮明。

「西洋近代文明がこの世で最も賢明」という私の固い信念をついに初めてぐらっと揺るがせる一冊になるかも。

自由・平等といった啓蒙思想は実はネイティブアメリカンからフランス人が教えてもらったのですよ、といった趣旨の第2章。虚を突かれる。そんな発想、私にはまったくなかった。

 

(12月7日 追記)

自由や平等は西洋の歴史の必然として形成され啓蒙の時代に花開きましたーーもちろん私もつい先日までそう確信していたわけだが、『万物の黎明』第2章(✕第1章)によると、まったく違う。

西洋人たちは、アメリカ大陸で遭遇した先住民たちに、いわば「おまえら、どんだけ不自由なんだよ、どんだけ不平等なんだよ」と批判され説教され、しかも事実そうだったから、ぐうの音も出なかった、そんなトラウマのごとき衝撃や、そのリアクションとしてこそ、啓蒙は始まったようだ。

カンディアロンクというある先住民の男との対話が主に伝えられている。ネイティブアメリカンと聞くと、私たちは往年の映画などによるイメージばかりが浮かびがちだが、彼の話からは、私たち自らが近代人の証としているような理性や知性そのものしか感じ取れない。逆カルチャーショック!

 

ところでーー 前日アメリカドラマ『ファーゴ』シーズン2を再視聴し、予定通り圧倒的な個性と面白さに打たれたが、その魅力を指し示す文言にたどりつけず、もどかしかった。しかし今、ギャング一家の有能な手下として登場する先住民系の男の印象が、カンディアロンクと重なった(言及に値する!)

もう本ではなくドラマの話だがーー 『ファーゴ』はシーズン1~3を視聴したが、人々がひたすら殺し合うどのシリーズでも、最も冷徹で残酷と思しき人物が、なぜか最も哲学的で覚醒的な雰囲気をまとい、そうした意味ありげな台詞もしばしばつぶやく。同ドラマの比類なき美点の1つは間違いなくこれだ。