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【2019 輪廻転生】

★ドライブ・マイ・カー/濱口竜介

濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』をテアトル新宿で鑑賞してきた。

この監督の決定的な特異性を形容するキーワードを思いついた。「ワークショップ的」。今回もワークショップ的な展開の意外性や推移性こそが面白かったのではないか。そうでないところを感じると多少冷めた。

そういうことで、この映画は「物語が面白い!」とはなんだか言い難く、しかし決定的に「展開が面白い!」とは言いたくなる。「脚本が面白い」というのとも違う。

役者がなにかを演じた結果が面白いのではなく、役者がなにかを演じる過程が面白い、ということかもしれない。劇中劇という形が注目されるだろうが、じつはそれ自体がこの面白さの核心ではないとも思う。

旧作の『ハッピーアワー』でも『寝ても覚めても』でもすでにこの特異な面白さを体験していたが、今回もなかなか的確な言葉で説明ができない。きょうの時点では、Wikipediaにあった監督自身の次のコメントが最も腑に落ちた。

「あらゆる映画はある程度フィクションであり、ある程度ドキュメンタリーでもある。どちらも作った経験からすると、純然たるフィクションも純然たるドキュメンタリーも存在しない」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BF%B1%E5%8F%A3%E7%AB%9C%E4%BB%8B

もう1つ。「俳優はカメラの前で演技している。それは演技する俳優のドキュメンタリーでもある。1回限りの何かをその都度やっている」

ラストシーンに「あれ?」と誰しも思うだろうが、なんとそれについても監督自身が最もうまく説明しているではないか! すなわちーー

「あのエンディングさえなければ完璧だったのにと言われたことがあるんですが、あのエンディングを加えた理由というのは、まあ『完璧じゃなくするため』ということだと思います。…もう少しだけ破れ目みたいなものを作っておきたかった」
(同じくWikipediaより)

 

なお、村上春樹的なものに浸るのかと思いきや、思いがけずチェーホフ的なものに浸った、という感じ。