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【2019 輪廻転生】

夏の宿題2021<人間の誕生は宇宙の必然か>(ポール・デイヴィス先生)

https://tokyocat.hatenadiary.jp/entry/2021/06/01/000000 からの続き

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コロナとオリンピックのことばかり考えているが、本当は私の「夏の宿題」を片づけないといけない。今年のテーマはポール・デイヴィス先生が示したテーマ<人間の誕生は宇宙の必然か>だ。先に紹介した『生命の起源』に続き、近著『生物の中の悪魔』も読んでいる。

生命の起源 - 株式会社 明石書店

生物の中の悪魔 | SBクリエイティブ

 

私が長く引っかかっているのは「なぜ何もないのでなく、何かがあるのか」という疑問だが、これって「神はいない。でも人間がいる。おかしい。なんかこう根本に何かないと、おかしい」という引っかかりに近い。理論物理学者ポール・デーヴィスも、私が読むかぎり、似たところに引っかかっている。

どうやらポール・デイヴィスは、生命みたいな途方もないものが「偶然できたなんて考えられないっしょ」という思いを抱えて、この2冊を著したと思われる。

 

ポール・デイヴィスのゴール(著書の結末)はこうだ。

《(真っ向から対立する二つの世界観があり)一つの世界観は、正統派の科学の立場であって、方向性のない宇宙、目的のない非人格的な法則という考え方、すなわち、生命と心、科学と芸術、希望と恐怖といったことは、劣化へと向かって不可逆的につき進む宇宙のつづれ織りの一角にたまたま浮かび上がった文飾といったものでしかないと見る虚無主義の哲学である。

 他方の世界観は、間違いなくロマンチックである。しかし真実かもしれない。すなわち、宇宙には、物質を生命と意識へと進化させる精妙な法則があって、それによって自己組織化し自己複雑化する宇宙、すなわち、思考する存在が発生したのは、宇宙全体のなり立ちの、基本的かつ統合的な部分であって、私たちはひとりぼっちではないとみる右中間である》(生命の起源)

 

《…もし、生命や心の出現が自然界の基本的な法則に刻み込まれていたとしたら、生きていて考えている存在としての我々には、宇宙レベルのある種の意義が与えられることになるだろう。

 そして我々は、宇宙を本当の故郷として感じられるだろう》(生物の中の悪魔)

 

どうだろう、「神はいないけど、何かあるよね!」と言っていないだろうか?(私にはそう囁いている)

この結論的な直感を確かめるかのようにポール・デイヴィスは「生命はすごいと言うけど一体どんなふうにすごいのか」を詳細に追う。そこに浮上するのはゲノムや細胞の仕組みの途方もない華麗さ。そして、この華麗さの本質は「情報」という視点でこそ解き明かせるとみる。この確信にこそ2冊の真骨頂がある。

 

「何かあるよね!」は私への囁きであり、実際は「現在の物理法則とは別の次元のまだ知られていない物理法則があるはずだよね!」という文言になる。これはやはり、いわゆる「この世界には要素に還元できる法則のほかに複雑な総体として創発してくる法則もある」という見方の一種ではあろう。

しかしそれだけにとどまらない予感も漂う。

《そうした知識の断崖は、単に一定の技術的な細部の知識が欠けているといったことではない。それは主要な概念的な方面の知識の欠落である。もちろん私は、生命の起源に超自然的な要素がかかわっているなどと言うつもりはない。そうではなく、認識全体にかかわる非常に基本的な何かが欠けている、というのである》

《私は、生命の誕生は奇跡ではないとする意見に賛成し、私たちが住むこの宇宙は気が遠くなるほど精巧につくられた生命にやさしい宇宙なのだ、という意見に賛同する》(『生命の起源』<はじめに>から)

 

ここまでは予告編。暑い夏はまだ長い。

 

※さらに続く↓

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