東京永久観光

【2019 輪廻転生】

《濃縮還元ハルカリ飲料》

ハルカリの1枚目アルバム『ハルカリベーコン』。渋谷系とか秋葉系というくくりがあったのだから、こっちは目黒系とでも呼ぼう。六本木汐留お台場にはさほど近くない。丸の内や霞が関にはもちろん遠い。●ニュースを騒がせる昨今の10代は、男子を中心にとにかく必死の形相ばかりを伝えてくるが、懸命さや感傷をしっかり見つめたうえで、こうした力の抜きようもあるのだ。物語で癒すのでもない。これは10代でなくとも参考になる。心にも身体にも効く。《まーリラックス サーフライダー ノリ》。●しかしラップとはどうしてこんなに気持ちよいのだろう。赤ん坊が耳で聞いたことばを初めて口にするとき、世界とか自分とかまだぼんやりしている中に、なんらかのイメージが、はじけ、きらめき、ひろがっていくのが、きっと楽しいにちがいない。大人はどのことばもすでに出そろって、世界と自分を軸にかっちり組み上がっている。でもそれをふたたびラップで置いてみると、初めてのことばの楽しさがちょっとよみがえるのかもしれない。


●話は変わるが、こうした目黒系の少女も、理不尽な暴力や戦闘に遭遇しないとはかぎらない。たとえば乙一の短編集『ZOO』の「カザリとヨーコ」のような。ところが、あの少女は、あまりに酷い仕打ちを受けていながら、すっかり客観的で元気な顔をふっと見せるのだ。《よしきたー!》と。それでいてジョークはブラックだったりする。自虐なのか健気なのか分らないポジティブさ。読んでいてびっくり。そこにもまた救いが見つけられるのか。