東京永久観光

【2019 輪廻転生】

『自由を考える』


●優れた思想というのは、「これって、そうか、あのことか、いやこれにもぴったりだ」と、最近気になっている現象が次々に整理、説明できるようなものなのだろう。『自由を考える』(東浩紀大澤真幸の対談本・1000円)が探り当てようとしている新たに思考の枠組みは、それに値すると思う。その枠組みを、二人は言い方を変えながら繰り返し、イメージさせていく。言い方のほんの一例を、今読んでいるところから拾ってみると。●まず「言論の自由表現の自由のように、あらかじめ意識しておくことができ、内容を特定して指示することができる、そういう自由とは別のものとして、匿名の自由というものがある」(趣旨)という。では匿名の自由とは。大澤《それは言ってみれば無意識の自由です。それは、「何をする自由」「何である自由」であるとあらかじめ特定できない自由です。だから潜在的に可能な選択肢の項目のなかに、書きこんでおくことができない自由です》。●どうだろう。ここからは様々な具体例が思い浮かぶのではないか。たとえば、私がさっきちょっと考えていたこともなぜか関連してしまう。●さっきちょっと考えていたこと。ウェブに載せる記事や情報をあとからカテゴリーで一覧するには、各記事の頭にそのカテゴリー名を予めいくつか付けておくとよい。たとえば「本の感想」「新パソコン情報」、あるいは「明るい社会 私の実践録」だとか「モテすぎて困る 対処の秘訣」だとか(まあなんでもよい)。ブログのツールはこれがスムーズにできる。「はてな日記」もまあ備わっている。しかしその場合、先のことを考えてカテゴリー項目を絞っていくわけで、後からもしかしたら検索したくなるかもしれないカテゴリー項目、あるいは検索したくなるなんて思いもしないカテゴリー項目のすべてを、「あらかじめ特定」しておくことは原理的にできない。アクセスの確実性や利便性が増していくと同時に、アクセスの融通性というか無謀性というか、そういうものはその分だけ消えているのかもしれない。●とはいえ、このことは、この本を読んでいかにも思い当たりそうな話だ。だがもう一つ、あまり思い当たりそうにないことにも思い当たった。それはまた改めて。[思わせぶりな予告][保留にしてある思いつき]

*以前書名を『自由について』と書きましたが間違いでした。