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【2019 輪廻転生】

★「ゲンロンと祖父」

だいぶ前に話題になり気になっていた東浩紀「ゲンロンと祖父」を『新潮』(2018年1月号)でやっと読んだ。短いものだが個人の体験と思想が直に響いてきた。なぜか知識人の文章でこうしたものは希少だと思う。

筆者の祖父は中小企業を経営するオヤジで《浩紀はそんなに本ばかり読んでいるとアカになっちゃうぞ》が口癖だったという。

その応答のようにして筆者はこう書いている。《ぼくはたしかに学者になった。知識人になった。アカになった。しかしそれでもいまだに、学者であり知識人でありアカであることが現実の生活でなにを意味するのか、まるで理解できていないのだ。なぜならば、幼いぼくのまわりには、だれひとり学者も知識人もアカもいなかったからだ。それはぼくの限界だ。知識とも努力とも想像力とも関係のない、いわば階級的な限界だ》

そしてこうした限界を運命として肯定するところにこそ、ゲンロン起業の核心があり郵便的誤配もある、といった主旨で結んでいる。

3年近く前のエッセイだが、私には共感と発見が大きかった。そして今だからやはりどうしても思い起こした。中小企業オヤジ的ともいえる菅総理日本学術会議とのソリの合わなさを。