東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★もののけ姫(宮崎駿)

もののけ姫』を劇場で見たくてシネコンに出向く。指定席に着いて10分後。『千と千尋の神隠し』が始まった。スクリーンを隣と間違えた。そのまま視聴。『もののけ姫』はまた来よう。

ワンダーランド、ディズニーランド、夏休みの大冒険、日本のファンタジーの古層。

 

先日読んだ『復興文化論』、大戦後の作家は宮崎駿ただ一人を肯定的に解読していたことで、気になっていた。

《宮崎はアニメーションの歴史において行方不明になっていた〈自然〉や〈日本〉を救出し、新たな「豊かさ」として――つまり多元的な魂を収容するものとして――提示したが、それはディズニー的なものから除外された「魂」を救出しようとする、彼の強い倫理観と結びついている》(少し略して)

《私は日本のサブカルチャーが果たそうとした「魂の教育」を見出したい》

 

最大級の評価だと思った。これらは『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』に最もよく当てはまるが、『千と千尋』でも宮崎駿が抱いているとおぼしき価値や倫理は漂ってくる。それは世紀をまたいだころの日本ならではの貪欲さや内実の喪失に対する嫌悪のようなもの。

その価値や倫理自体は、私であれ誰であれ子どもであれ、言葉にできるしそうすれば単純に頷けるものだが、しかしそれが、圧倒的な極彩色と躍動感として正面に疾走してくる。しかもそのすべてがただ一人の手仕事によって達成されている。どうしたって感嘆せざるをえない。

 

むかしルーマニアを旅行して知り合った若い人が『千と千尋』をみたといい「amazing」とメールしてきた。あの映画のへんてこなあれもこれもみんな私たちには馴染みのものなのです、ということを伝えた。ディズニーランドやワンダーランドのオールタナティブが私たちの世界像には常に潜んでいる。