『風立ちぬ』に続き、今さらながらDVD鑑賞。
『もののけ姫』では、日本史の表にあまり出て来なかった人々が活躍する。『風の谷のナウシカ』では、生物として尊重されているとは言いがたい菌類と虫が重要な役割を担う。
両作品とも、自然と文明とが原理的に衝突するが、どちらを選ぶかどちらが勝つかという単純な問いではない。
それにしても、ナウシカは空中をみごとに飛ぶし、サンもよく跳ぶ。
……いずれも宮崎駿をめぐって語り尽くされてきたテーマだろう。
風の谷はパキスタンのフンザがモデルだとも言われる。私は大昔(1989年)行ったことがある。渓谷の風景、石垣の路、人々の服装など、たしかに思い出される。さて、フンザとさほど遠くないパキスタン山岳部ではこのところ武力紛争が激しいようだ。『ナウシカ』にあったような、軍による侵攻や支配、剣や爆弾を使った命の奪い合いは、日常の現実なのかもしれない。
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虫の神経の集まりを脳と呼ぶかどうかは微妙なところのようだ。そもそも、虫と脊椎動物ははるか昔に分かれたので、脳があるとしても独自に作られたことになる。
ちなみに「昆虫はみな飛ぶ」そうだ。硬い殻に隠した薄い羽根をここぞとばかりに拡げて飛翔する。ただし、この虫の飛行能力もまた、鳥とはまったく別ものとして進化している。
さて人間は、虫の子孫ではないのと同じく鳥の子孫でもない。しかしながら、『ナウシカ』の飛行船や『風立ちぬ』の飛行機が、ややローテクな仕掛けによって飛行する姿は、虫と鳥のどちらに近いだろう? 人間はわりと虫みたいに飛ぶのではないか。