東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件/エドワード・ヤン

仕事の合間をぬって『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』のDVDを見た。すでにビデオで1回、劇場で2回見ているのだが、今回やっとストーリーが俯瞰でき人間関係も把握できたかも。

 

http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/

 

じゃあ今まで、ストーリーも人間関係もぼやっとしたまま、やたらと感動や推奨の文言を並べていたのか、というとまったくそのとおりで、言い換えれば、この映画の素晴らしさは、ストーリーなどの外形ではぜんぜん言い尽くせない、ということなんだと、改めて気づかされる。

小四の家族は、大人も子どももみな個別に苦悩を隠し持っている。特にそのことが改めて実感できた。彼らはみな、ほんの10年あまり前、大陸から追われるように、また新天地にすがるように、移住を余儀なくされてきたのだ。その巨大だが寡黙な心情は、映画の背景をずっと流れているのだと思う。

とはいえ、この映画は、やはり10代の少年と少女の、つたない、はかない、ラブストーリーであったことが、また否応なく確信されてくる。

人の記憶は 曖昧でいびつで、いつだっけ、近所とか学校とかで、誰とだっけ、あれをどうしたこうした、そんな断片のみが、浮かんだり消えたり、むやみに定着したり、そんなふうに出来上がっている。この映画の一家の出来事もそんなふうにうつろうから、私にはいっそう真実味を感じさせるのか。

それと、公式サイトで、飛機の役をした人は、のち『台北の朝、僕は恋をする』に出たとあり、「あ! そうかこの顔だ」とつながったのが、今回 吉だった。ちなみに――ネタバレ注意―― 考えてみればこの映画、タイトルがクライマックスのネタバレになっているわけだが、もはやかまわないのか?

 

ラストで小明と小四はいつもの通りで出くわす。立ち止まったり互いに体を近づけたりそむけたりするそのシーンは、カメラの位置が動きつつも1カットで撮影されており、最終の出来事が起こる直前、小明はアップになり、背後には暗がりと屋台のような店の灯りがぼんやり漂っている。