東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★緑の光線

さっき出先のテレビに『緑の光線』(NHK BS プレミアムシネマ)が映っていた。すぐにわけもなく目がとまってしまう。南仏のバカンスの食卓で数人の男女が食事しながら会話している様子が、きっちりしないショットで長々と捉えられている。

みんな自在に食べたり聞いたり話したり、カメラは動いたり動かなかったり、皿の中身や隣の人の腕がちらっと入ったり入らなかったり。そんな撮影の即興性と運動性が心理や表情の即興性や運動性を感じさせるから、目がとまるのか? しかしこんな撮り方、小津安二郎ならただちに「却下!」かも…

海があり山がありで、旅先のあでやかな風景を描いているとも言える。しかし同時に、ホームを離れてどこか気もそぞろの気分を描いているとも言えるのか。みんなで楽しく肉など食べているのに、主人公は菜食主義の理由を延々語って食卓に微妙な空気が流れたりもする。じゃ「中国人みたいに米を食え」(同席の男がそう言う)

そもそも旅先とは、見知らぬ人とのコミュニケーションとディスコミュニケーションが交錯する場所。それが面白いと思わないと旅はやっていられないが、それがストレスにならないわけもないから旅は永遠には続かない。