東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★万引き家族/是枝裕和

ISがときに首斬りをせざるをえないように、財務官僚がときに文書改竄をせざるをえないように、日本の民はときに万引きをせざるをえない。とはいえ、首斬りをいつまでも続けられる世界情勢ではないように、万引きをいつまでも続けられる日本情勢でもない。幸か不幸か。(おや、文書改竄は未来永劫?)

それに「万引き」に対しては、許容・推奨の気持ちだけでなく、罪や苦しさの感情も伴ってしまうのは、現代日本の私の通常の感覚でもある。「万引き」は永遠には続かない。映画も永遠には続かない。幸か不幸か。「家族」もまた、聖か邪か、2時間では決められないが、映画は終わらざるをえない。

この映画にカンヌの人が心を打たれたように、私がこの映画に心を打たれないわけにはいかない。あらゆるシーンにおいて。「あれはなに?」「あれはほんと?」と外国の人に聞かれたら、私が小一時間説明してやりたい。いわく、万引きの日本の私。

土曜でも26時からの上映だとガラガラだったが、終わって誰もすぐには立ち上がらなかった。


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(7月10日 追記)

ドラマ『anone』では「非定型の家族」と「非合法の稼業」というものが模索されていると、内心おもっていたのだが、映画『万引き家族』もその点においてまったく共通しているのは、じつに胸が騒ぐ心持ちだ。

どちらもフィクションではある。とはいえ、『万引き家族』は「これってひょっとしてフィクションとも言い切れないんじゃないか」という高揚感があった。一方、『anone』は「どうせフィクションにきまってるけどさ」という枠が明瞭であるがゆえに、むしろ枠を忘れてのめりこめたような…


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http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
(『万引き家族』公式サイト)