『三度目の殺人』をディスクでやっと見たが、役所広司の心理の底が隠されたままだったことは、私には面白さではなく不満につながったようにおもう。
役所広司や広瀬すずは映画の中でも外でも決定的に好印象の人物なので、ただの悪人である可能性やまったく不条理な人である可能性を、想定せざるをえなくても、どこかで否定したい、という自分の気持ちに気がつく。もっと凡庸で美質を欠く役者だったら、謎の面白さは狙いどおりに生じたのでは?
是枝監督の映画で傑作というなら『そして父になる』『海街diary』『誰も知らない』のほうかな、私としては。
画面全体に青黒い感じがして、なんとなく思い出すのはポン・ジュノ『殺人の追憶』。あっちは刑事の話で『三度目の殺人』は弁護士の話なので異なるけれど、殺人の不気味さや役所や広瀬が秘めているかもしれない闇といった点が、『殺人の追憶』の不気味さや闇を思わせる。あっちがまた見たくなった。
いや でも、『三度目の殺人』と『殺人の追憶』は、ぜんぜん違う映画だな。単に『殺人の追憶』がまたみたくて、こんなツイートをしてるだけなんだろうか? あるいは、『三度目の殺人』の役所広司の北海道での一度目の殺人の謎を、『殺人の追憶』のごとく追っていく映画が見たいのかもしれない。
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というわけで『殺人に追憶』がやっぱり見たくなり、DVDを借りて視聴した。それでわかった。『殺人の追憶』でも、いかにも犯人と思われた人物がどうもそうではなかったという、すっきりしないエンディングになるところが、『三度目の殺人』と似ていたのだ。単純な類似点だった。
それと、『殺人の追憶』はやっぱり私には傑作だ(私にでなくても傑作だが)。もしあの映画が私の故郷が舞台だったとしても、あの因習的な田舎の空気や人々というものは、同じように描かれることになるだろう。そんなふうに、隣国の少し昔の回想と悔恨が、どうも他人事でなく感じられるのだ。