東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★ポン・ジュノ映画術――まさに記号論

私たちは、目の前にある街の景色も家の造形も人の風体も、考えてみれば、ことごとく、それ自体というより何らかの象徴として眺める。記号論とはそんな話であり、80年代からさんざん聞かされ気づかされてきた。『ポン・ジュノ映画術』は、その飽くなき分析がびっしりで、呆れるほど。

分析は的確かつ核心的と思った。監督も観客もたしかにそれぞれの場面にそのような多層的な意味を置き意味を取りうるだろう。

 

とはいえ、あまりの深読みに少々疲れ、そんなことまったく意識しなくてもポン・ジュノの映画はパーフェクトに面白いじゃないか、とも言いたくなった。

実際、同書を読んでいた明け方、『パラサイト 半地下の家族』が猛烈に見たくなりアマゾンで見始めてしまった。終わっても収まらず、さらに『殺人の追憶』と二本立てノンストップ。ついで昨晩は『母なる証明』の急転直下。なんでこんなに面白くやめられないのか。その分析は別に必要かもしれない。

この3作は甲乙つけがたいが、やはり『殺人の追憶』がどこまでも後を引く。【以後ネタバレ----------】理由はやはり最後の容疑者がもう犯人でいいだろうと思うのに白黒つかないところか。パク・ヘイル演じるその若者はいったい良い奴なのか悪い奴なのか。込めた感情の向く先が永久に失われる。

 

さて『パラサイト』については、同書が、全編のプロットや構図や動きに込められた縦横無尽の意味をもののみごとに明らかにしているので、いよいよ完全にわかり味わいつくした感が、新たに生じた。

 

ただ、あいまいな日本の私としては、その横に最近テレビでも観た『万引き家族』をやはり並べてしまう。半地下の本物家族が方向も計画も善悪もはっきりしていたのに比べると、われらの疑似家族は、なにもかもぼんやりとしたまま惑い続ける。その悲しさと良さとわからなさ…。

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