東京永久観光

【2019 輪廻転生】

自分の死去を知るためのレッスン

昨日オンライン会議があった。オフィスには私を含めて8人がいて、それを俯瞰した全景が壁の大きなモニターに映し出された。つまり、私の姿も他の7人の姿も、等質の人物像として眺めることになった。こうした体験は私には珍しく、とても奇妙で面白かった。

カメラ位置の関係で、ふだんは知らない自分の横からの全身像が、ずっと見えていた。凡庸なデスクと椅子と凡庸などこかのおじさん。

「この世界は私という特別な視点からのみ開かれる」という事実は、きわめて不思議な体感であるはずなのに、日頃はそんなこと忘れているから、逆に世界がふいに客観的な視点から開かれてしまうと、「あれっ」ともっと不思議な感じがするのだろう。

それにしても、同じように見える8人のうち、たまたま1人だけが、この私の意識とシンクロしているけど、それってなぜ? ーーそう考え出すと夜も眠れなくなる。何人かの哲学者が何年も眠れなくなり私もたまにそうなるわけだが、その謎があっけなく破れてしまう気配も漂う(錯覚だと思うけれど)

それから、この8人のうち1人だけが、テロリストの銃弾に当たったり、検査で重い病気とわかったり、宝くじに当たって喜んで雪ですべって骨折したり、いつそんなことにならないとは限らない。その1人がたまたまその横から見える凡庸なおっさんだったとしても、むしろいかにもありそうなことだ。

オンライン会議を毎日毎日開いて、このように自分をぼんやり眺めていたら、私には特別な魂が宿っているという信念を諦めることができ、やがて必ず体や心が衰えてこのモニターやこの世界から消え去っていくという凡庸な宿命を、受け入れられるようになるのだろうか?