もし2001年に同時多発テロが起きなかったら――想像するのは無益か。
歴史は1つしかないという当たり前のことを身にしみて理解していれば、もちろん無益だろう。しかし、あらゆる歴史は「それが起こるまでは」何通りもありえた。私たちはむしろそっちのほうをもっと身にしみるほど理解する必要がある。
たとえば私が私の父母から生まれなかった可能性、私の父母が祖父母から生まれなかった可能性、さらに…、と想像すると実感できるように、現在というのは、無数に分岐する可能性があった歴史線のたった1つの歴史が実現したにすぎない。(単純な理屈)
そうなると、本当に身にしみるべきは、「私たちは後戻りができない」という事実なのだろう。最も絶対的で最も虚無的な事実。米国の20年も日本の20年も私の20年も。
ちなみに、こうしたことを初めて思ったのは、ダンカン・ワッツ『偶然の科学』を読んだときだった。愚直で意外で巨大な真理が詰まった一冊。
https://www.amazon.co.jp/%E5%81%B6%E7%84%B6%E3%81%AE%E7%A7%91%E5%AD%A6-%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%83%E3%83%84/dp/4152092718…
https://www.fnn.jp/articles/-/236417
《あのテロがなかったら》《ブッシュ政権の性格は根本的に違ったものになっていただろう》《2008年にオバマを大統領に押し上げた力学は生まれていなかったであろうことは間違いない。であれば、オバマ政権の最大の(意図せざる)レガシーであるトランプ現象もまた生まれていなかったかもしれない》(中山俊宏)