東京永久観光

【2019 輪廻転生】

虹は実在なのか?

虹は実体でなくイリュージョン、と言いたくなる。しかし、何かが見えるというのは可視光の反射が網膜に映じられているだけだから、虹にかぎらず視覚自体がイリュージョンというべきか。それどころか、あらゆる知覚は「物自体」ではなく脳の情報処理にすぎないという意味では、この世はすべてイリュージョン。

という話とはべつに。虹ははかないものであり、すぐ消えるから、ほんとに見たのか、見たつもりなのか、ふとわからなくなる。もう無いから確かめもできない。それどころか、見ている最中ですら、ほんとうに見えているのか、いないのか、はっきりしないこともある。

だから、虹の記憶は自分の頭の中にしかない。それを思い出すときは、現実を思い出しているのか、錯覚を思い出しているのか、夢を思い出しているのか、あまり違いはない。

ところが面白いことに、現代では、虹が出たら誰もがデジカメに撮る。「どうだ、やっぱり虹は出たのだ!」 たしかに、これほど確実な記録はない。

……しかし、そんなことをしているうちに、いつしか、デジカメに撮られた虹だけが実在であり、デジカメで撮られなかった虹は、もちろん実在してはいないし、そもそも実在してもいなかったのだ、と感じられてくる(かも)

今日ではなく先日、虹の写真をとりながら、そんなことを思った。