東京永久観光

【2019 輪廻転生】

ことしのサンタはきっとドローンでやってくる!


考えてみれば、サンタクロースは二次元ですらない。人間でも生き物でも小説の主人公でもなく、3Dでも絵画でもなく、幻。それでもクリスマスは実在するから阿呆くさい? それとも、それでも実在するから素晴らしい?


この前『インターステラ−』で、トウモロコシ畑に飛んできたドローンを追いかけるシーンを見て、この歌詞を思い出した。

 遠い夏 息を殺し とんぼをとった
 もう一度あんな気持ちで
 夢をつかまえてね
 So you don't have to worry, worry
 守ってあげたい

2番はこのように丁寧な対になっている。

 日暮れまで 土手に座り レンゲを編んだ
 もう一度あんな気持ちで
 夢を形にして

松任谷由実はもう何十年も聴いているわけだが、曲だけでなく詞も実に良く出来ていると、毎度のことながら思う。

 守ってあげたい 
 あなたを苦しめるすべてのことから

 守ってあげたい
 ほかには何もできなくてもいい

完璧だ。しかも最後はこうだ。

 'Cause I Love You
 'Cause I Love You

……出来過ぎじゃないか。


これがなぜクリスマスと関係あるのか。今聴いているアルバム『Neue Music』の1曲目「守ってあげたい」の次が、なんと偶然「恋人がサンタクロース」だったから、かというと違う。

ふと、きのう読んだ以下のツイート(荻野幸太郎さん)を思い出したからだ。

 恋愛や性交渉をすることをある意味で当然視している人たちは、そうじゃない人生観の人がかなりの数で存在していることが上手く信じられないという事情があるのかもしれない。
 逆に、人間ではなくキャラクターを主な性的対象とし、恋愛やセックスを現実生活とは無縁の絵空事と位置付けて、基本的にマスターベーションしかしないセクシュアリティの人にとっては、どうして性暴力だの性差別だののリスクを負ってまで恋愛をしたり性交渉をしたりするのかを不思議に思う人もいる。
 https://twitter.com/ogi_fuji_npo/status/545025634146062336

さらに以下。

 韓国人のMOEXが日本語で二次コンである自分のセクシュアリティについて穏やかに説明しただけなのに、攻撃的な論評をする人が次々と現れたことが、オタク差別の実在を物語っていたよね。どうして彼のセクシュアリティを裁く権利があるかのごとく振る舞えるのか? それこそ差別に他ならないだろう。 
 https://twitter.com/ogi_fuji_npo/status/545116622772375552

 本当の二次コンの人って、現実の人間の代替物としてキャラクターを見ている訳ではないし、ご本人のアイデンティティなので、自然科学的に変えられる・変えられないの問題じゃないし、だから私の知ってる韓国の人も、投獄覚悟で日本のイラストの廃棄を拒んで、刑事捜査に立ち向かった訳でねぇ。 
 https://twitter.com/ogi_fuji_npo/status/545808109130616833


――ということで、説明は略して結論だけいうと、二次元のだれかとの恋愛をゴールだと思い込むのは、「守ってあげたい」のような三次元のだれかとの恋愛をゴールだと思い込むのと、たいして差がないんじゃないかと、気がついたのだった。

広く「恋に恋するメカニズム」をなんとなく体感していれば、ユーミン中毒や恋愛中毒を理解し共有し許容しときに嘲笑もしているのと同じように、おたくの二次元中毒もまた理解し共有し許容しときに嘲笑もしている、ということ。

それは、「サンタクロースは実在する」という子どもの崇高な幻想、そして「クリスマスは実在する」という大人の崇高な幻想と、たぶん似たようなものなんじゃないか。


「でも年賀状はマジに実在しますよ」(日本郵便


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