東京永久観光

【2019 輪廻転生】

長距離の バス待つ君の 人生は さておき旅は まだ先がある

週明けから旅行する。中国10日間。1年ぶりの休暇。しかし、その準備が半端でなく忙しい。安い飛行機を探しまくり、スケジュール表をにらんでどこをどう回るか考え、ホテルを調べて次々にオーダーし、カバンや服も用意する。まったく旅行なんて仕事と同じ。「あなたがこれまでに培ったライフハックと時短の知恵をフル活用して事に当たりなさい」

ふと思ったが、旅行の準備が忙しいのはインターネットのせいだ。何でもかんでもシミュレーションできる。それが災いしている。中国といえど国内飛行機やホテルは完全にネット予約可能。いや今回つくづく思い知ったのは、Google mapを使えば、来週歩くはずの観光地や市街地をことごとくつぶさに体験できてしまうことだ! 

コンピュータは詳細なライフログによって過去を過去でなくすが、詳細なシミュレーションによって未来も未来でなくす―― といったことを廣瀬通孝さん(VR研究者)がこのあいだ発言していたが、まるでそのとおり。

2か月、3か月なにも計画せずにぶらぶらした昔が懐かしい。


「君のゆく道は 果てしなく遠い だのになぜ 歯を食いしばり 君はゆくのか そんなにしてまで」

未熟な若者は誰だってこんな幼稚な詩の一つや二つは作るだろう。

だが、かつて若者だった君は、やがて思い知ることになる。君のゆく道がじつは果てしなく「短い」ものだということを。

いやそれはいい。それより、だいたい君はどこに向かっているのだ? その道でいったいどこに辿り着くつもりなのだ? 君の最終目的地はべつに中国の上海や張家界や厦門ではないはずだ。

だのになぜ、いつだって君は歯を食いしばってばかり。

日暮れて道遠し。

仕事にはゴールがあるが、人生にゴールはあるのだろうか。「そんなものはありません。人生はプロセスこそ大事なのです」 ……そうかもしれない。しかし、ゴールはなるほどよくわからないが、じつはプロセスも未だによくわからない。それが私の人生だと思われる。そして、人生のゴールがただただ輝かしく喜ばしいともかぎらないと思えてきたのと同様、もしやプロセスすらしかりなのではないかという、恐ろしい発見。実際、そのプロセスの渦中に君がいたとき、なにかそんなに輝きや喜びに満ちていたか?


さて、人生の段取りや見通しはともかく、出発を前に仕事の段取りや見通しはどうにか立った。

では旅行とは。ゴールのためにありますか? プロセスのためにありますか?