東京永久観光

【2019 輪廻転生】

100m走とマラソン


囚人のジレンマリチャード・パワーズ asin:4622072963


3度目の挑戦。415ページ中、342ページまで来た。こんどこそ終わりまで行くだろう。

本は、一気に読むべきものと、じっくり読むべきものがある。…としよう。するとそれはあたかも筋力トレーニングと有酸素トレーニングのようだ。

ときには読書筋に重い負荷を与え、それを鍛えてやる必要がある。もちろんすぐに息は切れてしまう。しかしこれで筋肉は増強するはず。そのうえで、時間をかけて一枚一枚ページをめくっていく。ウォーキング、ジョギング、リーディング。適度な心拍数。こちらは全身運動なので十分な酸素が読書筋に送り込まれる。

読書とは文字から意味への代謝だ。文字が燃えて意味が生じる。しかし2種の運動では代謝の質が異なっている。筋肉運動では、燃えやすいグリコーゲンの文章がぱっと燃えるだけ。一方、有酸素運動なら、ふだん燃えにくかった脂肪の文章もようやくゆっくり燃え始める。

囚人のジレンマ』、私は主に土日を使って読んでいる。本当に集中できるのは一度に1時間くらいか。瞬発力と持久力の両方が試され鍛えられている気がする。しかし、パワーズの小説は相当燃えにくい部類の文章だ。そもそも読書筋が強くないと歯が立たない。しかも本当は毎日繰り返し読まないと完全燃焼には至らないのだろう。

(ちなみにメタボリックシンドローム対策なら、有酸素運動を中心に1回30分以上そして週3回以上は体を動かすべし、などと言われることが多い)

ところで、私と同じく現在『囚人のジレンマ』読書進行中という人を、はてなダイアリーに一人見つけた。その人も長い期間をかけてゆっくりしかしとても深く読み込んでいる。時をおいてブログにつづられる感想をたどるのが、ひそかな楽しみだ。やっぱりそうだと共感したり、なるほどそうかと膝を打ったり。孤独なリーディングに大いなる励まし。