東京永久観光

【2019 輪廻転生】

永遠の1/2年


年度の変わり目。転任や退職の挨拶をする光景をあちこちで見る。

会社を辞め世界一周の旅に出ます、というメールが舞い込んだ。期間は1年。夫婦ともども。うち半年はカリブに面した某国で波乗りに費やすという。わずかな関わりの人だったが、仕事でなく出会っていれば、またぜんぜん違った話で花が咲いたかなあ、などと思う。そういうことはままある。

自分が本当にやりたいことをやる以上にいいことなどあるわけがない。

個人が好き勝手に生きてこそ、世界の景気や自身の景気は上向くのだ、と信じる根拠はない。しかし、個人が好き勝手に生きないからといって、日本の景気や自身の景気が上向くという保証だって、まったく誰もしてくれない。

最近ちょっとライフハックの隠れ愛好者になりつつあり、情けないような頼もしいような妙な気持ちなのだが、ともあれ、ライフハックとは時間をいかに無駄にしないかに尽きる。それは結局、この世のあらゆる仕事というものが容赦のない期限と際限のない効率とを恥もなく人に強いてくるからだ。

だが、真に肝に銘ずべきは、個人の人生や年齢こそ無期限などではまったくないという事実だろう。そしてまた、たとえばカリブで波乗りをする日々には、少なくとも書店やブログにあふれるたぐいのライフハックなど無用、という事実だろう。さらにもうひとつ。これはあまり認識されないようだが、特殊なほど短く生きる人間にとって、人生の途中で過ごしてみる波乗りの半年間のような体験だけは、無期限という実感を錯覚ではあっても本当に味わえる唯一の方法だと思われる。