東京永久観光

【2019 輪廻転生】

ボクワ キミタチガ スキダ(イチオウ)


タイからカトマンズに向かう飛行機で、ウォーリーとかいうハリウッド映画を早々とやっていた。あまり知らなかったが、どうやら地球外知性と地球内知性が遭遇する話らしい(といってもどちらもロボットのようだ)。あってるだろうか?

せっかくなのでしばしヘッドフォンで音も聴こうと思い、備え付けのヘッドフォンをつけたが、チャンネルがどれかわからない。というか、異なる星のロボット1匹2匹(失礼‥‥人)しか出てこない画面に、いったいどんな音声が入っているというのだ? チャンネルをどんどん変えてみても、どれかわからない。いや、どれでもいい気がしてくる。インド風歌謡曲でも、アメリカのヒップホップでも、クラシックのシンフォニーでも、どのチャンネルをあわせてみても、ふしぎとBGMにぴったりくるのだ。でも正解はどうやらチャンネル1だった。ほとんどロボットの動きの効果音とか短いうなり声みたいなものだけが連続する音声のようだ。ただ、ときどき過去の地球人類の記録映像みたいなものが映り、そうした場合などはオールディーズっぽいボーカル曲も聞こえてくる(これがまたなかなかいい)

なお、彼ら2人は、どちらも移動する生物であり、どちらも視覚をもつ生物だ。(私はときどき、宇宙にかりに高度な知性が誕生したらそれがどのような知性であっても、必ずや移動と視覚の能力だけはもたざるを得ないようになっているのではないかと考えることがある)

しかもおもしろいことに、ロボットのくせに、目が口ほどにものを言う。驚きとかとまどいとか「人間どうしなら目だけで通じるよ」と確信する人もいるが、ロボットもそうなのか。


 *


さてまあ、異星のロボットどうしがどうしたら仲良くなれるのか、という課題は、異国の人間の偶然遭遇をも思わせる。あるいは、たとえばアメリカ国軍の兵隊とイラクやアフガンの武装勢力戦士でも、相手の目さえみればはたして仲良くなれるのかどうかについて。

私はにとってはもちろん「ポカラで夕飯を食いに入った店で、兄ちゃんたちとどうしたら楽しい時間を過ごせるか」という課題である。


(1)


日本語を教えてあげようかと言い、メモ帳に「笑」という文字と「怒」という文字を書いて見せる。

「これは反対の意味を表す日本語なんだけど、何だと思う?」

「イエスとノーかな?」

「いい線いってるけど違う。実は、これはスマイルとかラフという意味と、ゲットアングリーという意味なんだよ。じゃあどっちの字がどっちかわかる?」

「こっちがスマイル?」

「あたり。じゃあ、ここにスマイルの顔とアングリーの顔をきみが書いてみて」

彼ら(二人)がそれを書く。

「どう、なんとなく、笑という文字と、怒という文字に似ていない?」


 (2)


「ところでさ、5ルピー札もってる?」
5ルピー札が出てくる。
「これ誰(紙幣の肖像をさして)」
「国王だよ」
「きみたちに今、国王はいるんだっけ」
「今はいない‥‥」
「へえ、いついなくなったの?」
苦笑い
「国王、好き?」
いろいろ答える。
「では問題。この国王の顔は笑ってる? 怒ってる?」
「どっちでもないと思うよ」
「実は、時々笑い、時々怒る、というのが答えなんだよ。なぜかわかる?」
「うーん、国王は国民の状況に応じて、ときとして笑ったり、怒ったり‥‥」
「きみは素晴らしい生徒だねえ。でもほんとはね‥‥」
そして私は、国王の肖像部分を山谷に折っておいた自分の5ルピー紙幣を見せた。


 *


これは「本当にあった世界の美しい話」です。いやほんとについさっきのこと。

昼のうち繁華街を散歩しながら、なんか面白いことできないかなと考えておいて、実践したもの。とてもおいしい店だったし、店員の男二人もフレンドリーだったので。そのあと、日本語の「愛」「恋」「変」とか「松」「竹」「梅」とかも教えてあげた。

旅行して何をしているのかと思えば‥‥


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