東京永久観光

【2019 輪廻転生】

エゴイスティックに自分らしさを貫く生活がしたい


現在 世界の人口はざっと65億人。では人類が始まって以来 地球上に現れた人間の総数はどれくらいだと思うか。これがなんと5百億〜1千億人程度らしい。池田清彦のエッセイ集『やがて消えゆく我が身なら』に書いてあった(『環境危機をあおってはいけない』からの引用という)。《これまで地上で生まれた総人口の6パーセントから12パーセントは、今生きているってわけだ》。…う〜む、よく分からないが、う〜む、何かこれではいけないという気になる。これに似た話があった。ビッグバンによる宇宙誕生が137億年前だというのに、46億年前にはもう地球が出来てしまった、そのあと10億年ほどで生物まで出現してしまった、おいおい早すぎるよ、といった奇妙な違和感をたしか清水義範が表明していた。これはどういう気分だろう。現代人やこの地球といったものは、ちっぽけな我が身の尺度で実感できるつもりになっている。一方、人類の全てとか宇宙の果てといったものは途方もないスケールであるべきだ。ところが前者はなんと後者の何割かを占めてしまっているではないか、という事実の奇怪さだろうか。この世は無限や永遠であってほしいという漠然と間違った願望が覆されることが心外なのだろうか。しかし、これはむしろ、現在の人口の多さや地球の歴史の長さのほうが、実はすでに想像を絶している、すでに無限や永遠に近い冗談みたいなスケールなのだ、と捉え直すのが正しいのではないだろうか。平均寿命は80前後だというのに半分がとうに過ぎてしまっていいの(俵万智?)、という気分に似ていなくもないが。

そうではない。結論をいえばやはり、宇宙や地球やこの私が存在していること自体が果てしないミステリーやファンタジーに感じられるということなのだ。無限や永遠の存在は存在ではない。宇宙や人類が無限や永遠ではないのだと感じたときこそ、宇宙や人類の感触を初めて得ている、ということなのではないか。

それにしても、池田清彦先生は、あいかわらず面白すぎる。常に《身も蓋もない》事実を直視することを避けないので、とにかく清々しい。たとえば、「エゴイスティックに自分らしさを貫きながら、地球環境にも配慮した生活を創っていく」とかなんとか、どこかの正義の媒体がいかにも正義の人物とともに掲げているフレーズのあまりの不快さとはまるきり正反対の清々しさ!

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やがて消えゆく我が身なら ASIN:4048839101