東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★伽倻子のために/小栗康平

「プラス松竹」忘れていた名作がまだいろいろ。

 小栗康平『伽倻子のために』

こんな映画があったなあ。そもそも在日の苦闘があったのだなあ。いや在日の存在自体もう歴史に書かれるだけの出来事みたいだなあ。それどころか私は2012年にサハリン旅行したのに、その時この映画を思い出しもしなかった!

南果歩のデビュー作として知られている……というか知られていないのは、文化映画かと思うほど地味で真面目だからか。とはいえその若い2人は寡黙だが行動は大胆。説明が少なくて遠景が目立つところが、侯孝賢の『恋恋風塵』などを思い出させた。

 

伽倻子のために | 小栗康平オフィシャルサイト ─OGURI.info

 

原作が気になって、後日、手にしてみた(ちらりと読んだ程度だが)

伽倻子が主人公と出会う前に見舞われトラウマとなった出来事、また伽倻子が東京から連れ戻された後に身を置かざるをえなかった生活と男性関係、そうしたものが切々と綴られているようだ。次第にはっきり浮かんでくるのは、おそらく暗く悲しい恋の物語だ。映画の全体から隅々に行き渡っていたあのトーンは、まさにそれだったのだと改めて感じ入る。