彼の人気の背景には、左派の論調をどうにも苦々しく白々しく感じながらも仕方なく黙ってきた多くの国民が存在する。そのことが、20ページにもわたる特集で、強く静かに実感されてくる。
こうした現象は、私の心のなかでは、もう20年以上も昔「新しい歴史教科書をつくる会」が登場したころから、ずっとわだかまったままになっているものだ。だから、本人を含めてルポに登場する人たちの主張は、肯定したいとは思わないが、よく理解できるし、あるていど共感もできる。
だがそんなことより、この特集の取材・執筆は石戸諭。少し前には同じニューズウィークで辺野古の長いルポも担当していた。対象に向き合う虚心坦懐の姿勢は、BuzzFeedに出てきたころから際立っていた。今回の記事も私には「百田尚樹現象」というより「石戸諭現象」。その意義のほうがずっと大きい。
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https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/06/post-12393.php