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【2019 輪廻転生】

イギリス下院議員殺害をめぐって


「イギリス「EU離脱」問題、一発の“凶弾”は歴史の針路を変えるか? 国民投票直前レポート」(現代ビジネス) http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48954 より

《国論を二分するような大きなテーマで、話し合いによる問題解決、事態打開への希望を失ったとき、そこに待ち受けているのは間違いなく暴力的な世界である》

《犠牲になったコックス議員は名門ケンブリッジ大を卒業し、シリア難民問題など人道分野での活動に尽力。昨年の総選挙で労働党から下院議員に初当選し、政治指導者やメディアは「期待の新星」だった》――このことが殺されてよい理由になるはずはないのだが、狙われる理由にはなったのかもしれない。

一方《容疑者(52)は18日、ロンドンの治安裁判所での人定尋問で「私の名前は、『裏切り者に死を イギリスに自由を』です」と述べた。容疑者は過去に精神疾患での治療歴があり、南アフリカアメリカの極右団体の機関誌、出版物を購入していた時期もあったという》――人を殺したくなる理由?


コックスさんのような人生でありたいと私は思う。容疑者のような人生ではありたくないと私は思う。しかし問題は、私はコックスさんのような人生を今ほんとうに送っているかどうかだ。私が容疑者のような人生を今ほんとうに送っていないかどうかだ。

私がコックスさんを殺すようなことをしないのは、私がコックスさんほどの明るい人生を送ってはいないにせよ、容疑者ほどのつらい人生を送ってもいないからではあろう。

そして、容疑者が人を殺したくなるほどのつらい人生を送っていたのだとした場合、その背景には、やっぱりはっきり言って「グローバル化によって世界的に起こっている格差の拡大」というものが横たわっていることを、感じざるをえない。

もちろん、グローバル化によって世界的に格差が拡大して自分がひどいめにあっているからといって、人を殺すなよと言いたい。容疑者に言いたいし自分にも言いたい。人に殺されるような人生はまずいものだし、人を殺すような人生もまずいものだ。それ以上にまずい人生を思いつかない。

とはいうものの、ここで問うべき問いが、いやな感じで、私のなかで、姿を現してきた。「グローバル化によって世界的に拡大している格差の拡大」というやつの正体は、コックスさんのような人生と容疑者のような人生との差のことを言うのか? だ。

……と、いろいろ考えれば考えるほど間違えそうでもある。そして考えに考えた末に間違った一票を投じそうでもある。イギリスで、そして、日本で。しかしむしろ聞きたい。では、どちらかに投じたら、そして、いずれかに投じたら、ほんとうに間違わないですむのか? 世界は傷を負わないですむのか?


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微妙に関連する話として:

多様性と競争のコンニャクカンテン」!(現代小説のタイトルではない)

既得権益を持つ者は、「蒟蒻寒天」を怠り続けた日本全体が地盤沈下しても、実は、それほど困りません》

《真の問題は、多様性の下での競争に参加すべき層が競争から逃げることで、競争することが現実的でない層にそれを押し付けていることです》(三浦瑠麗)

まったくそのとおりだと思う。