東京永久観光

【2019 輪廻転生】

亡国論

国民生活白書によれば、今や5人に1人がフリーターだという。でも、驚くには及ばない。むしろ、若者5人のうち4人までが、ゆるぎなき仕事中心人生航路を、目指すべき理想か、避けがたき現実かはともあれ、未だに捨てきれずにいるということなのだ。そっちこそ、もっと由々しき、あるいはとてもありがたい事態ではないか。

●ちなみに、フリーターに数えるのは15歳から34歳まで。学生と主婦も除外されている。たしかに、「何してんの?」と聞かれて「学生です」「主婦です」と胸を張れる人は「フリーター」に甘んじなくていい。逆に、いい大人の男なら「ちゃんと働いて稼げ」と。「いつまでもブラブラ、スネかじってどうするんだ」と。う〜む、これは世間の目を忠実に取り入れた調査だったのか。

●それにしても35歳以上はどうなっているのか。フリーターというより正社員の首切り組とみなそうということかもしれない。でも実際には、たんに若者でなくなっただけの半端者が、それなりに生息しているはずだ。でもそこまでは、国民生活白書も構ってくれない。そうしてその生態は霧に包まれたままとなる。こうした階層の人々は、この時代の不安や絶望の象徴なのだろうか。そうした人々の存在に、かえってかすかな安らぎや希望を見出したとしたら、おかしいだろうか。

●さて、フリーター問題をどうしても解消したいなら、簡単な方法がある。正社員の年収を半分に、フリーターの時給を3倍ほどにすることだ。そうすれば仕事の質も収入もやがて一緒になるだろう。そのとき全員が「正社員」になるのか「フリーター」になるのか、それは知らないけれど。●もちろん、そんなことでは《今後の日本経済を担うべき若年の職業能力が高まらない》《経済全体の生産性が低下して経済成長の制約になるおそれがある》と国民生活白書は警告する。これまでの日本は、その能力や生産性というものを一丸となって守り抜いてきたということだろう。だがひるがえって考えるに、正社員の誇りで凌ぎを削ってきたその能力や生産性とは、それほど素晴らしく普遍的なものなのか。それは、今後も永久に、5人のうちの5人がそろって絶対死守しなければ、世界は滅んでしまうのか。●たとえば、最近のコンピュータは数年前に比べれば10倍はよく働く。能力や生産性がものすごく高まったのだ。その分、我々が少々仕事をサボったり、ガムシャラに頑張らなくなったとしても、まあいいではないか。

●あいかわらずのテキトウな楽観。心配しなくても、フリーターが5人のうち4人にはなるまい。なったらおもしろいが、なるまい。