東京永久観光

【2019 輪廻転生】

★和僑/安田峰俊(2012)

 和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人


中国女性と結婚して雲南省の農村に住み着いたという日本人に興味を抱き、あてもなく探しに向かうルポ。無性にひかれる。

かつて私も旅した昆明や石林の雑然とした街のムードが蘇るような描写。男の存在は2ちゃんねるへの自らの書き込みに端を発しているが、そんなところも私には興味が尽きない。獏とした情報を頼りに南平村という村の名をつきとめた書き手は、まず現地の地図を買う。白タクのライトバンに乗り込む。

これはもう雲南旅行記を読むというより雲南旅行に今から自分が出かける体験に等しい。『村の名前』という小説が昔あったことも思い出す。

アメリカや韓国や日本が嫌いな以上に私は中国が嫌いのように思うが、それでも、これほどわけのわからない国、今も昔も迷い込まずにいれらない国、ただ無視して通りすぎるわけにはいかない国は、この世に2つとはなかろう。


◎村の名前/辻原登
 村の名前 (文春文庫)
 昔読んだ感想は以下。
 http://www.mayq.net/junky17.html#001110